暮らしにフランスらしさを取り入れたい人にオススメしたい「トワール・ド・ジュイ」

Tomonari SAKURAI

タータンチェックやペイズリーなど、誰もが聞いたことのあるテキスタイルのパターン。そういったパターンの中で、フランスにも独特なものがある。トワール・ド・ジュイというものだ。絵柄は人物や風景が書かれたもので、名前を知らなくともそのパターンは、きっと見たことがあるだろう。

現在もその柄は生地として、壁紙として製造されている。

トワール・ド・ジュイは18世紀にパリ近郊のジュイ・アン・ジョザスという街に繊維工場ができたことから始まった。この町の水質が布地の生産に最適だったことに起因する。工場を設立したのはドイツ出身のクリストフ・フィリップ・オーバーカンプという人物だ。パリを旅行したことがあるならオーバーカンプというメトロ5号線の駅の名前を聞いたことがあるかもしれない。この駅の名前は、この創設者の名前から来ているのだ。

この繊維工場では花や、鳥、風景や物語の挿絵のようなパターンをプリントする技術を確立していった。これが大成功をおさめ、工場は14ヘクタール以上、1300人以上を雇用するヨーロッパ最大の繊維工場へと発展した。フランス革命を経験しても、その人気は衰えなかった。プリント柄の独創性だけで無くそれをプリントする技術革新も行い、工業製品の展示会で金賞を受賞し、フランスでも2位の規模の工場に発展。ナポレオンからも勲章を授与。ここで作られた布は服飾だけでなく壁やカーテンなどのインテリアにも多く使われ浸透していった。

19世紀に入ってナポレオンから授与されたメダル。

しかし19世紀に入りその人気が低迷し、オーバーカンプも死去すると、一気に衰退してしまう。

このジュイ・アン・ジョザスにあるエグランティーヌ城が、美術館としてその美しい布地の歴史を伝えている。

エグランティーヌ城が現在はその博物館となっている。

トワール・ド・ジュイ博物館の現在の特別展示はポルトガルのプリントの展示。

クリスマスに併せてイベントが行われ、以前も紹介したLa Compagnie de l'Histoire et des Artsのメンバーがナポレオンの帝政時代の衣装の再現を行った。当時の衣装を正確に再現するだけでなく、当時のお茶菓子なども用意。室内でのゲームなども来場者に参加してもらっていた。

ナポレオン帝政時代の服装を再現。この時代はギリシア時代のファッションを取り入れているのが流行。

来場者に振る舞われたお菓子や飲み物も当時のものを再現。ビスケットのようなものは当時のマカロン。現代のようにクリームを挟んだものとは違う。これが原型なのである。

フランス伝統となったトワール・ド・ジュイの絵柄は現代も受け継がれていて、そのスタイルはそのままに絵柄が現代風になっていたり、その生地を使って現代風にアレンジしている。

トワール・ド・ジュイの生地を使った様々なアイテムが製品化されている。クリスマスの飾り付けでプレゼントにも最適といったところ。

ちなみに、フランスのサッカーチームのワールドカップ用のオフィシャル・シャツはこのトワール・ド・ジュイをモチーフにしていることからも、フランスを代表するもののひとつであることが分かる。フランス車オーナーだけでなくフランスにちょっと興味があればこのスタイルを取り入れてみるのはいかがだろう?

La Compagnie de l'Histoire et des Artsの主査であるファニーさん。これでイベントの参加は一段落して春まで、服装を縫ったりといった季節に入るという。

写真・文:櫻井朋成 Photography and Words: Tomonari SAKURAI

櫻井朋成

無料メールマガジン登録   人気の記事や編集部おすすめ記事を配信         
登録することで、会員規約に同意したものとみなされます。

RECOMMENDEDおすすめの記事


RELATED関連する記事

RANKING人気の記事