走りたくてウズウズする!ランチア・フルヴィア・ザガート1600のレストアが完了

Octane UK

フルレストアした車に、最初に乗るときの喜びは格別だ。最高の気分だ。なぜなら、レストアには常に予想以上に時間がかかり、挫折と喜びが入り混じるものだから。そして通常は、レストアしようと選んだ車がメジャーでなければないほど、山は高く谷は深くなる。今回の『Octane』UKスタッフの愛車日記でレポートするランチア・フルヴィア・ザガートのレストアは、まさにその通りだった。



エンジンのリビルドはスムーズに終えることができたのだが、とにかくボディの修理が大変だったのだ。ザガート製ボディのパネル交換が必要な場合、交換用のパネルはまず存在しない。つまり、自作しなければならない。私の車の場合も同様で、すべての角、ホイールアーチ、両側のドアスキン、リアハッチ、ルーフの大部分を、“プレステージ・リフィニッシング”の魔術師たちが金属板でゼロから作り直してくれた。12カ月をかけた後、やっとボディを再塗装する準備が整った。





80年代のいわゆる”修理職人”がパネルを雑に溶接していたようで、オリジナルの錆びたドアパネルの残骸をそのまま残していたため、元の色が何であるかは判明していた。オリジナルの色はロッソ・ラリーだった。伝統的なイタリアのレーシングレッドではなく、オレンジがかった感じのランチアの当時の競技用のカラーだ。私はこの色が大好きだった。特に、フルヴィア・ザガート1600の全モデルにオプション設定されていた、黒いストライプのボンネットとのコントラストが気に入っていた。



引き取りの日までは、私は部分的に完成した状態しか見ていなかった。なので、“デイ&ホワイツ”にはカバーをかけたまま保管しておいてもらい、完成した姿を初めて見る瞬間を儀式的に味わうことにした。思い返せば、私がこのザガートを初めて見たのは1973年、14歳の時だった。学校から帰ると実家の前に停まっていたのだ。その時も「スゴい!」と思ったが、今回ついにカバーが外された瞬間は、その時以上に「凄い!!」と感動した。



色もストライプも完璧だった。エンジンをかける前から、とにかく近所の道路を走り回りたい!と思える車。ボーイズ・レーサーのスペシャル版とでもいうべきこの車は、私の車に対する見方を一変させた。車はもはや、家族の移動手段だけではない。走り回ってナンボだ!

とはいえ、まずは慣らし運転という面倒で退屈な作業がある。エンジンはまったく“普通”ではなく、大型のバルブとカッコいいカム、ウェーバーの45(キャブレター)2機、そして魅惑的なバナナ形のマニホールドを装備していた。このエンジン用にマッピングする新しい123型電子ディストリビューターが存在するが、少なくとも500マイルは走る必要がある。まさに今、そのために走っているところだ。順調に進んでいたのだが、今年1月のビスター・スクランブルに行ったのが最後になった。霜が降り、道路が凍結防止用の塩で覆われてしまったためで、321マイルのところから動きが止まっている。

つい2週間前には、また出かけたくてたまらなくなった。スロットルを軽く開けるだけで(自分では4000rpmのリミットを設けているのだが)、この車が道路を走る姿は元気いっぱいに見える。ウェーバーは低回転でも唸り、2800rpmで調子が出てきて、3000rpmを過ぎると歌い出すのだが、4000rpmで私のリミットに達するため、楽しさが失われてしまう。スロットルを踏み込めば70mph以上でも巡航でき、流線型のザガート製ボディのおかげで風切り音はほぼ皆無だ。



今の私は天気予報に釘付けで、雨が塩分を洗い流してくれることを祈りながら、500マイルの目標達成を目指している。ことわざにもあるように、「果報は寝て待て」だ。ただ、これを書いている今はまだ1月なのだが…




文:Harry Metcalfe

Harry Metcalfe

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