アルファロメオ スパイダー・ヴェローチェのレストアをスタート|『Octane』UKスタッフの愛車日記

Octane UK

『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は1969年 アルファロメオ スパイダー・ヴェローチェに乗るサム・シックが「レストアにあたって何が望みなのか?」を考えてみた。



私の1750スパイダーは、ターナー・クラシック社に委ねることにした。私の住むケント州東部からほど近くの同社の近代的な施設には輝くビッグ・キャットの看板が掲げられており、同社はジャガーを専門に扱いながらも、幅広い車種を扱っている。

イアン・ターナーによって設立された同社は、彼本人が何度も他のレストア業者との経験で失望したこともあって、自身のカーコレクションを整備・レストアすることを目的としていた。その噂が広まるにつれ、イアンは他のプロジェクトも依頼されるようになった。現在の彼の仕事場は、レストア中の様々な状態の車でいっぱいだ。イアンと彼のチームが、丁寧な仕事を心がけている証拠となっている。

私の“デュエット”の内装とクロームメッキや備品などが取り外されると、対応すべき作業が明らかになってくる。イアンと私は、ワークショップ・マネージャーのジョンとボディショップのスペシャリストであるデビッドと一緒に、たっぷりの濃い紅茶を片手に、錆について話し合った。そしてその錆がどこまで広がっているのかについても。



シル周辺の傷んだ金属を取り除くと、往年のリペア痕が見えてきた。私が所有する前に、オリジナルの金属に張り付けられたものだった。どこからが元のアルファで、どこからが修復後なのかは、塗装途中のこの段階ではまだわからない。この年式とコンディションのアルファでは、両シルを3分割の新しいパーツに交換するのが、疑う余地のないスタートとなる。



さらに、フロアパンの複数の穴、腐ったフロント右ストラット、悲惨な状態のロアーフロントパネルが加わる。インナーアーチに開いた穴はまだマシだが、本当に心配なのはリアの方だ。ペイントを剥がす初期の段階で、背面の大部分にたっぷりと深く盛られたフィラーが見つかった。しかしその真相は、シルバーの塗装がすべて剥がされてから明らかになるだろう。この続きはまた!



それでも、この車はエッジが効いていて、機構的にも悪くないと思われる。なので、予想外のことは何もない。イアンに、この車にレストアする価値があるかどうか尋ねると、穏やかかつソフトな口調でこう答えてくれた。
「私は今までに、もっとひどいものを見てきた。もっともっとひどいものをね」と。

そして、願望の話になった。多くの人々が予算内で愛すべきヒストリックカーをレストアするのと同様に、私もこのデュエットに対する希望と、現実の家計とのバランスをとっている。様々なシンプルな真実についてオープンに話し合い、私のモチベーションについてもしっかり確認された。手っ取り早く利益を出すという神話はすぐに払拭され(これは私の期待でも目的でもない)、またすぐに私たちはより本質的な考えへと移行した。

何が望みなのか?もちろん、それが重要な問題だ。私の頭の中には、妻との夏のロードトリップでアルペンの峠を越える様子が渦巻いているが、もっと平凡な答えが必要だ。私はこの愛すべきアルファを、現実的な余裕の中でできる限り守り、大切にしたい。そして何よりも、乗って楽しみたいのだ。日常の移動手段にはもうならないだろうが、信頼性が高く、冒険もできる車でなければならない。

そういったことの多くは、パネルやパーツを新品に交換するという経済的な現実に対して、デビッドがどれだけオリジナルの金属を残しながら再形成できるか、つまり、私の車を可能な限りオリジナルに保てるか、という課題となる。

どちらにも長所と短所がある。特に新しいパーツとオリジナルのパーツに関してはそうだ。帰路の短い道すがら、私たちはこれからも頻繁にこの問いに立ち戻ることになるだろうと、物思いにふけった。


文:Sam Chick

Sam Chick

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