乗れば気分はディカプリオ!? 『WOLF OF WALL STREET』のカウンタックがオークションに登場

Jeremy Cliff (C) 2023 Couresy of RM Sotheby's

8月の自動車オークションの話題といえば、アメリカ・カリフォルニア州のモントレー・ウィークがらみなものが多い。しかし、RMサザビーズが送ってきたプレスリリースは、なんと12月8日にニューヨークで開催されるものの案内であった。ホームページの「Upcoming Auctions(開催予定オークション)」を見てみると、まだ1枚のランボルギーニ・カウンタック25thアニバーサリーの写真しかアップロードされていない。



ニューヨークといえば金融街であるウォールストリート、ウォールストリートといえば映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」…、そんな連想をさせる。そして、RMサザビーズのオークション会社としての実力を見せつけられるのは、12月8日のオークションの目玉のひとつとして、映画に登場したカウンタック25thアニバーサリーを出品させることだ。映画の撮影には2台のカウンタック25thアニバーサリーが使われ、無傷な状態のものがオークションに出品予定とのこと。

「ウルフ・オブ・ウォールストリート」(The Wolf of Wall Street)は、2013年に公開されたアメリカ合衆国の伝記/コメディ映画である。一部は脚色されている、とはいえ実話に基づいた映画であることは、善良な市民としてはただただ驚かされる。ポスターには「仰天、興奮、衝撃!」と勢いあるキャッチコピーが飛び交い、「R18+」指定されたことも話題になったことが記憶に新しい。

映画に登場するカウンタック25thアニバーサリーのハイライトといえば、レオナルド・ディカプリオ演じる主人公、ジョーダン・ベルフォートが薬物の影響下で運転するシーンだろう。ベルフォートが雇った探偵から自宅にFBIが盗聴器を仕掛けた、との報告を受け、最寄りの公衆電話から折り返すことになったベルフォート。カウンタック25thアニバーサリーで向かった先は、地元のエリートたちが集うカントリークラブだった。

ただ、ベルフォート、探偵からの報告を貰うまで親友でベルフォートの証券会社で副社長を務める、ジョナ・ヒル演じるドニー・アゾフと「クエールード」と呼ばれる鎮静睡眠薬(かつては合法、1980年代には濫用の危険性から禁止薬物に指定)を摂取していた。当時は手に入らない、とあって違法ルートから1錠2000ドルで購入したというから、立派な高級嗜好品であったようだ。

1錠で十分な効き目がある、と周囲からは言われていたもののクエールードは効き始めるまでに時間を要した。もう1錠追加で摂取した後、新陳代謝を上げるためにジムでワークアウトし、それでも何ら効果が表れないので薬のケースを確認すると使用期限から数年経っていることが分かった。そこでダメ押しのもう1錠と合計3錠を摂取していたのだ。

カントリークラブまでの道のりは“正常”に運転できたベルフォートだが、公衆電話で探偵と喋りはじめてからクエールードの作用が表れた。呂律は回らず、鎮静作用で身体に力が入らない。金融犯罪でFBIに狙われている身で、どんな些細な事件でも逮捕は避けたかったベルフォート。薬物の影響下ではあったが、とにかく自宅に戻ることを決意した。ナメクジのような動きでかろうじてカウンタック25thアニバーサリーに乗り込むシーン、「神様、もう薬物はやらないので、どうか安全に家まで帰らせてください」と祈って帰路に着くシーン、R18+指定の映画としては爆笑できる。なお、ベルフォートを演じるにあたって、ディカプリオはベルフォート本人にクエールードが効いている状態の演技指導を仰いだそうだ。

どうにか自宅に辿り着いたとき、カウンタック25thアニバーサリーは無傷だった、…と薬物の影響下にあったベルフォートは思い込んでいた。



しかし、数時間後、警察がベルフォートの自宅に現れ、「器物損壊(当て逃げ)」で逮捕された。自宅を出てボコボコになったカウンタック25thアニバーサリーを目の当たりにする。映画ではどのように傷がついたか回想するシーンが流れるのだが、これまた実にコミカルに仕上がっている。

留置場では尿検査を求められ、ベルフォートは弁護士に相談したところ、「尿検査したらいい」と言われた。映画を観た人なら覚えているだろうが、ベルフォートはありとあらゆる薬物を摂取していた。当然、尿検査では様々な反応が出ることは分かっていた。ところが尿検査後、しばらくすると釈放された。薬物摂取は過去にしたものの、薬物の影響下で運転した、ということは証明できない、という“穴”をついたのだった…

もとい。

白いエクステリアカラーに白いインテリアを組み合わせたカウンタック25thアニバーサリーは、アメリカに12台しか正規輸入されなかったそうだ。そのうちの1台で、なおかつ映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」に登場したという“ヒストリー”から、落札価格は150万~200万ドルが見込まれている。ウォールストリートには、有象無象の金融マンが居る。第二、第三のベルフォートが活躍(?)/暗躍しているのは、想像に難くない。そんなイケイケな人に、落札見込み価格を大幅に上回る成金ぶりを見せつけて欲しい。…映画に登場するベルフォートのように。



少しでも興味を持たれた方、改めて映画「ウルフ・オブ・ウォールストリート」をご覧になってはいかがだろう?


文:古賀貴司(自動車王国) Words: Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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