アルファによく似ている!? イギリス生まれのアルヴィスTB14が「大陸風」な理由とは

最終的なプロダクション版TB14。1950年に納車された。この洋なし型グリルを出発点に、ルドヴィグセンはラディカルなアルヴィスが誕生した経緯を調査した。

イギリス生まれのアルヴィスTB14がラディカルなまでに大陸風だった理由について、説得力のある自説をカール・ルドヴィグセンが語る。



ブャン・シュトゥーダーのアルファのために、ヴァルター・マーティンが作り出したデザインと、1948年のアールズコート・モーターショーで世界を驚かせたアルヴィスTB14の間には、何らかのつながりがあったのではないかという考えを、私は振り払うことができない。マーティンがデザインしたアルファは、グリルが三つ葉の形だった。これはグランプリカーのティーポ158や、ウィルフレード・リカルトのティーポ162GPプロトタイプを模したものだ。新アルヴィスも、ある記事の表現を借りれば「ちぐはぐな感もある洋なし型のラディエターグリル」が最大の特徴だった。

アルヴィスはすべて、自社製シャシーにコーチビルダー製ボディを架装していた。TB14の場合、シャシーは1940年にまでさかのぼる12/70型だ。製造を担当したのは、元ライレーのオースティンとパークスが1940年に設立したコーチビルダーで、コベントリーの元クロス&エリスの敷地を使っていた。最初は、戦時中の顧客向けにAPエアクラフトと名乗っていたが、より広い顧客を獲得する上では妨げとなり、APメタルクラフトに改称した。そのボディの主体はスチール製で、ボンネット、ドア、トノカバー、トランクリッドはアルミニウム製だった。

しかし、ボディをデザインしたのはAPメタルクラフトではない。アルヴィスは常々、シャシーを大陸に送って、ヨーロッパのコーチビルダーに腕を振るわせていた。そのひとつがブリュッセルのFJビデだ。1920年代に創業したFJビデは、2シータースポーツカーを専門にしていた。名前は不明のイタリア人デザイナーが率い、SSジャガーやタルボラーゴのシャシーを使って、明らかにアルファに影響を受けた2シータースポーツカーを製造していた。

SSジャガーのシャシーに架装されたFJビデのボディ。アルファ風の特徴が多く見られるが、独特の洒落た存在感もある。グリルは明らかに「洋なし型」だ。

原因と結果を切り離すのは難しいが、アルヴィスが重用していたこのブリュッセルのコーチビルダーは、54台の4シーター仕様TA14シャシーのうち、ベルギーに送られた1台について、ボディの注文を受けた。FJビデが考案したデザインを見たアルヴィスの経営陣は、サリー州にあった顧問エンジニアのキング&テイラーに、量産に向けた準備をさせた。その結果、2シーターのTB14プロトタイプが完成し、戦後最初のロンドンでのモーターショーでデビューを飾って、ピンナップガールのノーマ・ラッフルズがその特徴を紹介することとなったのである。

このFJビデ製ボディにも同様の特徴が見て取れる。ベルギーで依頼を受け、1938年アルファロメオ6C2500のシャシーに架装したもの。フェンダーは極端なティアドロップ型。

展示されたロードスター(アルヴィスのパンフレットにも掲載)は、バンパーが小型で、「洋なし型」グリルの後ろにヘッドライトを隠すという、イタリア人デザイナーが得意としたスタイルだった。流れるようなフェンダーと均整の取れたリアデッキは、マーティンのデザインを彷彿とさせる。同じ車両は、1949 年にアールズコートでも展示されたが、このときヘッドランプはノーズに取り付けられて露出していた。完成形のTB14が最初に顧客の元に届いたのは1950年3月のことだ。しかし、APメタルクラフトがボディを製造した100台は、12月には完売していた。

1948年のアルヴィスのパンフレット。描かれているのは、その年にロンドンのオリンピアで展示された1台。ヘッドランプは隠れているが、アルヴィスは効率を考えてこれを変更した。

時間的には厳しく、地理的な関係も奇妙ではあるが、ビスポークのスポーツカーの世界は狭いから、1947年にスイス(マーティン)と、無名のイタリア人デザイナー、そしてベルギー(FJビデ)の間に何らかの接点があったとしても、あり得ないことではない。アルヴィスが突如としてアルファになった理由について、これ以上の説が私には思い浮かばないのである。


編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curatorsLabo.) 原文翻訳:木下恵
Transcreation:KazuhikoITO(Mobi-curatorsLabo.) Translation:MegumiKINOSHITA
Words:KarlLudvigsen

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curatorsLabo.)

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