年間10台しか生産されないクラシカルな新車、ペンブルトンT24

Octane UK

軽量な車が台頭した時代は、これまでに二度、さらにもう一度あった。前者の1930年代や1950年代には、自動車にかかる費用は途方もなく、自動車の台数も少なく、労働者層は皆、四輪の通勤手段を求めていた。結果として、小型のサイクルカー、四輪車、バブルカーなどは四輪とはいえ駆逐されてしまった。オースチィン・セブン、ミニなどの、より大きく、かつ安価な量産車が登場したためだ。

そしてもうひとつは、もちろんコリン・チャップマンの時代である。彼は、フォードのデザイン担当重役ウィリアム・スタウトと仕事をしたデザイナー、ゴードン・フートンの信念を採用した。それは「単純化と軽量化」だった。流線型の1956年ロータス・イレブンの車重は412kgだったし、1996年エリーゼでもたったの725kgだった。

だが、このペンブルトンT24というサイクルカーは、わずか361kgしかない。オプションの大型のモト・グッツィ製エンジンを選べば、1トン当たりのパワーウェイトレシオは144馬力になる。なんとも興味深い…



フュエルインジェクション式直角V型のモト・グッツィ製エンジンがフロントに置かれ、シトロエン2CV用の4段(+リバースギア)のトランスアクスルでの前輪駆動だ。風が歯や髪や耳にまで入ってきて、首の後ろを無理やり通り抜けようとする感触がする。18インチのワイヤーホイールには昔ながらのロングストン製タイヤが装着され、シュロップシャーの小道で上下に揺れ動く。この素晴らしい車は、ここからほど近い場所で、ガイ・グレゴリーと専任のエンジニアや修理チームによって製造されている。

ペンブルトンという車名は、アルミ板のボディを寄贈した団体に由来する。ペンブルトンは元はといえば、ガイの父親がイギリスからアイルランドへのフェリー料金を回避するために考案した3輪の車である。ペンブルトン・グラスホッパーは最終的には4輪の車となったが、販売状況は当たり前のように行き詰まっていた。優秀なエンジニアのガイが、レーザーカットのパネル、スチール製のシャシー・メンバー、モト・グッツィ製の新バージョンのツインエンジンを使用して、再設計ができると判断するまでは。

もちろん、フレイザー・ナッシュやGNの全盛期を彷彿とさせるゴージャスなデザイン、完璧なプロポーション、そしてディテールの素晴らしさも魅力的だ。リベット留めのコーチワークで、エアロスクリーンやフィレットがリアのマッドガードとボディを視覚的につないでいる。



乗り心地はどうだろうか?大型ステアリングの下に太ももを滑り込ませることができれば、おそらく居心地は悪くないだろう。腰を落とせば、風避けもあるし、ステアリングは雨粒の間を縫って進めるほどにダイレクトだ。グリップとパワーのバランスも絶妙で、思い通りに動いてくれる。正確にいえば速くはないが、エグゾーストが鳴り響くとすこぶる爽快だ。

エンジンは、2種類から選択可能。現在も生産される3車用の744cc、52馬力/トルク44.3lb ftのユニット。または(この車のために新たに追加された)853cc、79馬力/トルク59lb ftで、2880ポンド高くなる。税込みの本体価格は3万9594ポンドだ。

たしかにそれなりに高価なのだが、これは手作業で作られ、細部まで美しく仕上げられた車だ。ドライブトレーンもハンドリングも、小さなメーカーによるものとは思えないほど洗練されている。屋根がないため、現代的なベルスタッフやバブアーのコートは必要になるだろう。

またオプションには、シート後方にしっかりフィットする良質なトノーや、防水加工が施されたシートの布張りもある。エクスクルーシブな車で、この程度の価格で購入できるものは珍しいともいえるだろう。希望通りのペイントや仕様も可能だが、年間たった10台しか生産されない。増産は望まれており、欧州へ輸出するための複雑な規制を克服するための努力がされている。

なにより、T24のステアリングを握っていると、世界はとても冒険的に見える。ぜひ一度試してみてほしい。


文:Andrew English

オクタン日本版編集部

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