来年投入予定の「IONIQ 5 N」とヒョンデの“遊び心とゆとり”を堪能

Hyundai Mobility Japan



レーシングカー「エラントラN TCR」の減速力に驚嘆


モータースポーツのカテゴリーで同乗走行したのは、エラントラN TCR。2リッター以下のターボエンジンをベースに作られているFWD車をベースにした、4ドアまたは5ドアの新世界規格(TCR)レースに参戦しているもので、ドライバーはKMSAドライバーのChoi Jeong Won選手だった。カスタマーレース部門で販売されているもので、レーシングカーながら新車のポルシェ911ほどの予算で購入できるものだ。



レーシングカーゆえに内装はほとんどが取り外され、ロールケージが組み込まれている。イコールコンディションで戦うTCRではBoP(バランス・オブ・パフォーマンス)が設定されており、2リッターターボエンジンは最高出力340psほどで競われる。1300kgを切る車両重量には十分過ぎるパワーだ。シーケンシャルトランスミッションは発進時のみクラッチ操作が必要で、走行中はパドルでシフト操作する。加速力よりも減速力に驚嘆させられたのは、やはり車両重量の軽さゆえか。コーナリングスピードも相当なものだが、姿勢の変化よりもタイヤの滑り出しが感じやすい、と助手席から体感した。

ハイライトのWRCマシン「i20 N WRC Rally1」は別次元!


当日のハイライトは、ラリージャパンでのWRCレースを終えたばかりの「i20 N WRC Rally1」だ。Hyundai モータースポーツ社製直噴ターボエンジンでハイブリッドシステムを搭載し、ガソリンエンジンで380hp、電気モーターで134hpを出すハイパワーとなっている。そう考えるとIONIQ 5 Nの最高出力がいかに強大なものか、あらためて認識させられる。もっとも、WRCマシンは軽いので走りはまったく別次元であった。



TCRマシンでも制動力に驚かされたのだが、WRCマシンはさらに強烈だった。アクセルペダルの踏みしろは助手席から見るかぎり“浅く”、ほとんどON/OFFスイッチのように見受けられた。サスペンションのセッティング、タイヤの粘着力の高さを体感し、“手加減しないでください!”とお願いした甲斐があったのかヌービル選手は超高速で駆け抜けてくれた。ステアリングの修正はゆっくりで、まるでスローモーションを見ているような不思議な感覚に陥った。



ピットロード手前でヌービル選手はわざわざグッと減速し、直角右コーナー、数メートルの直線、そして直角左コーナーという道を“こんなことできるんだよ”と言わんばかりの走りを披露してくれた。ラリーカー・ドライバーにとってサーキット走行は単調に感じるのかもしれない、と思わせてくれたと瞬間であったと同時に、グラベルではどれほどのアドレナリンが分泌されるのか気になった。



この日、せっかくIONIQ 5 Nで電気自動車のハンドリングマシンぶりを味わったのに、エラントラN TCRとWRCカーに同乗させて貰ったら、内燃機関車の熟成度を堪能してしまった。どんなに物理の法則を覆すような電子デバイスが登場しようともハンドリングにおいて軽さこそ、(今のところは)正義なのだと思い知らされた。

もっとも、電気自動車の普及はまだまだ始まったばかり。様々な技術の進歩・進化があるだろうし「電気自動車=重たい」という図式だって、いつまで続くかも分からない。なお、韓国ではIONIQ 5 Nでのワンメイクレースが開催されるそうだ。HyundaiがIONIQ 5 Nで見せてくれた遊び心やゆとりには、まだまだ伸びしろがある、と確信している。そして、どんな動力源だろうと、車の進化は楽しみでならない。




文:古賀貴司(自動車王国) 写真:Hyundai Mobility Japan、古賀貴司(自動車王国)
Words: Takashi KOGA (carkingdom) Photography: Hyundai Mobility Japan, Takashi KOGA (carkingdom)

古賀貴司(自動車王国)

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