ラゴンダが1億2500万円なら高くない!セレブを釘づけにする大人の強烈なサルーンが、いま東京に!

ラピードSがベースだがあくまでもリムジン仕様。最も注目すべきはCピラー、Dピラーのラインで、オリジナルのラゴンダを彷彿とさせながら、後席の空間確保が図られている。そして、後席の快適性は中東からの需要を満足させるために、最も重視すべき点である。とは言っても、0 → 60 マイル(0→96km/ h) 加速は4.4秒、最高速度は195マイル以上( 312km/h以上)であり、別に走行性能に妥協があるわけではない。




ただ、ほかのアストンマーティン車とは違い、スポーツカー、GTカーというよりもリムジンとしての性質を重んじている。穿った見方をすれば、タラフは、ラピードSをベースに外装を変えたロングホイールベースモデルと呼ぶこともできる。全長は5m40cmでホイールベースは19.9cm延長されている。5.9 リッターV12 エンジンの最高出力はラピードSより10ps デチューンされ560psとなったほか、ダンパーやスプリングレートも乗り心地を考慮して変更が加えられている。

雨の日でのプロトタイプ試乗とあって、限界を試せるような走りはできなかったが、素性の良さを感じさせる素直な走りを満喫できた。V12 エンジンはフロントミドシップと呼ぶべき位置に搭載され、8段AT はリアに配されるトランスアクスル方式で前後重量バランスに優れている。アストンマーティンとして、 たとえリムジン的性質が重視されようとも譲れなかったポイントだろう。後席のヘッドルームはしっかり確保されているし、オリジナルと比べたらレッグルームもたっぷり。しかし、トランスアクスルゆえにセンターフロアのトンネルの存在感は大きい。大股を広げて座る男性が増えている昨今だが、タラフでは紳士的に座ることを強いられる。




タラフの内装はほかのアストンマーティン車同様、カタログに用意されている素材や色の組み合わせだけで、ただただ美しい。 職人の技芸は、まさにアストンマーティンの十八番。しかもタラフの顧客の多くはアストンマーティンのカスタマイズ部門、「Q アストンマーティン」を通して、パーソナルに仕上げるのではないだろうか? それこそ砂漠で鷲狩り(中東で盛ん)をするためのケージが欲しい、という要望にさえも応えてくれる。それほどタラフの顧客は富裕層が想定されている。というのも、タラフの標準車両本体価格は75万ポンド(約1億2500万円)からであるからだ。ラゴンダのサルーンは伝統的に高額であった。1960 年代、 平均的なイギリスの住宅価格が2770 ポンドだった頃、ラピードは4950ポンドというプライスボードをひっさげてお目見えした。ウィリアム・タウンズが手掛けた最初のラゴンダ( DBSベ ースで7 台生産された)は1974年に1万4040ポンドで、この頃のイギリスの平均住宅価格は9970 ポンド。1979 年に"シリーズ2"と一般的に親しまれた直線基調のラゴンダは1979 年に4 万9333 ポンドでデビューし、この頃のイギリスの平均住宅価格は1万7793ポンドであった。




現在のイギリスの平均住宅価格が19万7000ポンドであることを鑑みれば、タラフの75万ポンドという価格は "従来通り" と呼べる。ちなみにタラフのボディは、カナダに本社を置くマルチマチック社のフルカーボンを採用。カーボンファイバーボディの利点は、強度と軽さ、そして成型の容易さなどが挙げられる。 前述のようにホイールベースはラピードSよりも19.9 ㎝延長されており、巨漢ぶりは一目瞭然だがボディ重量はほぼ変わってい ない。なお、カーボンの織目が塗装のトップコートに現れないよう処理する技術で、アストンマーティンは特許を取得している。タラフは特別な車であり、直接のライバルは存在しない。ライヒマンが筆者に飛行機を例えて語った言葉で、この原稿を終わろうと思う。

「高級サルーンはA 380 みたいな存在で、ファーストクラス"も"用意されています。その点、タラフはコンコルドです。ドラマチックで、イギリスを感じさせるもので、ファーストクラス"しか"用意されていません」



 
そして、この新型ラゴンダ、中東以外でもオーダーは可能である。


アストンマーティン・ラゴンダ・タラフ
エンジン:5935cc V12DOHC 
最高出力:547ps/6650rpm 
最大トルク:630Nm/5500rpm
トランスミッション:8段タッチトロニックⅢ、トランスアクスル 
ステアリング:ラック・ピニオン、パワーアシスト付き(速度感応式) 
サスペンション:ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、アダプティブテレスコピックダンパー、アンチロールバー
ブレーキ:デュアルキャストディスク(アルミとスチールを複合) 
車両重量:約2000kg
パフォーマンス:0-60mph(0 -96km/h )加速4.4秒、
最高速度195mph以上(312km/h以上)



取材車両は「トパーズゴールド」という塗装を纏っており、光の加減によってはプラチナにも見える。超富裕層がターゲットのタラフは、カタログ色ではない様々なボディカラーが発注されるだろう


編集翻訳:古賀貴司(自動車王国)写真:尾形和美 Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:Mark Dixon Photography:Matthew Howell, Kazumi OGATA

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