標高4000mの高地をクラシックカーで旅する│唯一無二の体験

photography:Bruno Leunen



6日目から、このラリーでも随一の美しい景色が続く道に入った。アルゼンチンで最長の5194kmに及ぶルータ・ナシオナル40(国道40号線)だ。カチとモリノスの2村の間は47kmにわたって未舗装で、サボテンと山々の間を縫うように進む。小さな教会のあるモリノスは、まるでハリウッド映画から抜け出したかのような村だった。そのハシエンダ(農園)が今夜の宿だ。そこからの数日間、私たちは数々の渓谷を抜け、荒野を進んだ。

野生の馬が自由に走り回る広大な大地が何マイルにもわたって続く。ようやくたどり着いたエスタンシア・ラス・カレーラス農場で、フォンデュと絶品の肉料理に舌鼓を打った。

覚悟はしていたが、万事順調とはいかなかった。途中で調子が悪くなり、レッカー車で運ばれる車も1台や2台ではなかった。例のラゴンダは、ブレーキとエンジンのトラブルでついに走行を断念。クルーはレンタルした車でフィニッシュ地点を目指すこととなった。

巨大な赤い岩がそびえ立つタランパヤ渓谷を抜けると、次の目的地はバレー・デ・ラ・ルナ(月の谷)だ。色鮮やかな景色が広がるが、砂埃がひどく、私たちのマスタングはショートを起こして発火した。幸い、炎はすぐに消し止められ、ダメージは最小限で済んだ。



翌日はワインで名高いメンドーサの美しいブドウ園に立ち寄る。近隣のホテル、ザ・ヴァインズに2日間滞在し、様々な銘柄を堪能した。

ゆっくり休息して英気を養った私たちは、再び40号線を走り、チリへ戻る国境を目指した。1台目は青空の下で国境を越えたのだが、最後に横切った車は雪をかぶっていた。その通過後に峠は閉鎖された。そこから28ものヘアピンが連なる山道を下り、麓の都市ロス・アンデスのホテル・デル・バリェに到着する。

いよいよ最終日の15日目だ。2週間前に別れを告げた太平洋を目指す。沿岸の村サパジャールでは、日差しを浴びながら獲りたての新鮮な海の幸をいただいた。目の前の湾では、私たちを楽しませるかのようにイルカが戯れていた。

地元の自動車博物館のオーナーが、自慢のクラシック・パトロールカーでやってきて、バルパライソへの途中にある施設まで私たちをエスコートしてくれた。見学のあとは、最後の数マイルを走ってチリのリヴィエラと呼ばれるビニャ・デル・マールへ。そこのシェラトンが最後の宿だ。

時にチャレンジングな旅だったが、どこへ行っても息を飲むような絶景に迎えられた。その夜のガラディナーでも、スタート地点のアントファガスタに戻りたくなったほどだ。2324マイルを走破してもなお足りないほど、魅力にあふれ
た旅だった。

編集翻訳:伊東和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words and photography:Bruno Leunen

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