レーシングモデルにインスパイアされて誕生したGT8 ヴァンテージのパフォーマンスは?

Photography:Andy Morgan



空力性能を最大限に高めつつもスタイリッシュにまとめられたカーボンファイバーパネルを"グラディエーターの鎧" のようにまとったGT8の姿は、スタンダードなV8ヴァンテージと比べれば、ハリウッド映画のスーパーヒーローさながらだ。デザインチームとエンジニアリングチームが思う存分に腕を振るったことが見てとれる。
 
車両重量は軽量オプションパーツを装着すれば1510kgと、最大で100kgも減量することができる。この車にそそられる人なら、可能な限り軽くしたいと考えるはずだ。そのためのマグネシウム製ホイールやポリカーボネート製リアウィンドウ、カーボンファイバー製ルーフ、チタン製エグゾーストなどがオプションで用意されている。そこまでしたら"エアロパック" も選びたくなるだろう。高くそびえ立つリアウイングや大型フロントスプリッターの効果も加わって、ミシュランのパイロットスポーツ・カップ2タイヤをさらに強力に路面へと押しつけることが可能になる。いっそのことAMRのレーシングカーのような蛍光カラーのアクセントが入った"ハロ" ペイントスキームを指定して、ワークスドライバーのダレン・ターナーの気分に浸るのもいい。


 
運転席のドアを開けると、心が躍るような演出のなされた空間に迎えられる。美しいサテン仕上げのカーボンファイバーがドアパネルを覆い、センターコンソールを飾るのもカーボンだ。キーをスロットに差し込むと、スターターの回転音がして、V8エンジンがドキリとするほどの咆哮とともに目を覚ました。現代のアストンはおしなべて音量は大きいが、GT8のそれはGT12をも凌ぐ大音量だ。特にスポーツモードで始動したときの傍若無人とすらいえるほどの轟音は、騒音低減協会から目の敵にされること間違いなしだ。
 
トランスミッションは、6段のマニュアルと、クロスレシオにした7段のパドル付きセミオートマティック "スポーツシフトⅡ"からチョイスできる。今の時代、レーシングカー由来の車にマニュアルギアボックスでは矛盾するように思うかもしれないが、いまやヴァンテージはアナログなドライビングを心行くまで楽しめる貴重な存在、最後の砦のようなものだ。油圧式パワーステアリングには筋肉質な重さがあり、微細な感触も残らず伝えるサスペンションは、常用域での扱いやすさも考慮に入れつつサーキットでのドライビングに適したセッティングがなされているが、固定レートなので路面状況に合わせた減衰力の調整はできない。ドライバーの"本気" を求める車なのである。
 
シャシー同様、エンジンの力を引き出すのにもドライバーの"本気" が求められる。搭載するV8エンジンはヴァンテージ史上最も軽く回り、かつパワフルだ。長い時間をかけて熟成が進められてきたV8エンジンには新たに改善できる余地はそう多くなく、排気系や制御系に手を入れることで10bhpのエクストラを得て、440bhpにまで高められている。
 

編集翻訳:嶋田智之 Transcreation:Tomoyuki SHIMADA 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Richard Meaden 

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