ポルシェ911それぞれの中間を埋めるために登場したのは?

Porsche AG

低価格版の911Tと最高スペックの911Sの間を埋めるのがこのシリーズの主力モデルだ。その最初が、1967年に誕生した911Lだった。"L"は「Lux」や「Luxury」(ラグシュアリー)から来ている。これは最初に登場した2.0リッター911を改名したものに過ぎず、違いはほとんどなかった。
 
翌1968 年に、この中間モデルはさらに改名して911Eとなる。今度は大きな意味があった。"E" はドイツ語で「インジェクション」を意味する「Einspritzung」の頭文字だ。ボッシュ製のメカニカルインジェクションを装備して、2.0リッターエンジンの出力が140bhpに向上したのである。
 
クラシックカー・ディーラーであるヘアピン・カンパニーのニール・ディキンズはこう評価する。「911Eの人気はまだ完全に目覚めていません。走りは素晴らしいし、感触もSバージョンと遜色ない。実は2.2Eのほうがトルクが太いので、60mph到達は2.2Sより速いくらいです。価格はSより1万ポンドほど安いのですが、どんどん追い付きつつあります」
 
911Eから導入された新技術で忘れられていることの多いのが、車高を自動で一定に保つハイドロニューマチック・ダンパーだ。これによってアンチロールバーが不要になり、乗り心地が改善された。この特殊なサスペンションは、1969~1971年の2.2リッター911Eに採用されていたが、翌年の2.4リッターモデルからは姿を消した。

巧妙な仕組みではあったが発展途上のシステムだったため、漏れや沈下が起きやすかったのだ。ハイドロニューマチック仕様の911Eは、従来型のスプリング式にコンバートされることが多く、今ではめったにお目にかかれなくなった。ついでながら、スポーツカーの名前に"E"が付くことがない昨今、「Economy」のEと勘違いして、911Tのほうが高価だと思っている人もいるようだ。

編集翻訳:堀江 史朗 Transcreation:Shiro HORIE 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Philip Raby and Robert Coucher

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