関係者が語る誕生秘話 最初の苦しみ ランボルギーニ 350/400GT

PHOTOGRAPHY Paul Harmer

世界一ワイルドなスーパーカーを生み出してきたメーカー、ランボルギーニ。歴史の節目となった重要なモデルについて、その誕生秘話を紹介する。

フェルッチオ・ランボルギーニは、フェラーリに業を煮やして、ライバル会社を自ら設立したといわれている。この“伝説”の真偽のほどは定かではない。確かなのは、トラクターの製造で財を成したフェルッチオが、1963年に自動車メーカーを設立し、翌年から名高い350GTの生産を始めたことだ。以来、世界経済は何度も混乱に陥ったが、ランボルギーニの勢いは55年を過ぎた今でも衰え知らずである。これこそ驚くべきことではないだろうか。

ランボルギーニの代表的V12モデルを選び、その歴史を振り返りたい。といっても、細かな仕様変更をくどくど述べるのではなく、各モデルの設計、デザイン、開発を担当した人物が語った当時のエピソードを紹介する。ランボルギーニのワイルドな走りを一緒に楽しもう。

GTメーカーを起業したばかりのフェルッチオ・ランボルギーニは、1963年に最初のプロトタイプ、350GTVを発表した。だが、量産モデルの開発は暗礁に乗り上げていた。350GTVのシャシーやエンジンの設計を担当したジョット・ビッザリーニは、フェルッチオと対立して会社を去った。また、フランコ・スカリオーネによるデザインは刺激的ではあったが、量産できるようなものではなかった。

幸い、フェルッチオには救世主が二人いた。ひとりはビッザリーニの推薦でチーフエンジニアとなった当時30歳のジャン・パオロ・ダラーラだ。ダラーラによれば、V12エンジンの出力が目標の350bhpに達すると、「それで自分の仕事は完了」とビッザリーニは考えていたという。「しかし、さらに磨きをかける必要があるというのがランボルギーニの考えだった。二人とも強烈なキャラクターだから、文字通り火花が飛んだよ」メカニカル面にはほかにも問題があった。

「GTVではすべてがレーシングカーのように設計されていた」とダラーラは振り返る。



もうひとりの救世主は、カロッツェリア・トゥーリングのデザインディレクターだった故カルロ・フェリーチェ・ビアンキ・アンデルローニだ。その作品には、フェラーリ166MMやアルファロメオ・ディスコ・ヴォランテなど、伝説的なモデルが並ぶ。アンデルローニは次のように回想している。「ランボルギーニは(GTVに)まったく満足していなかった。きちんと機能しないパーツも多く、修正は不可能だったから、私たちは完全に新しいものを造り始めた。ただし、スタイルの変更は控えた。既にトリノでGTVを発表済みだったからだ」

昼夜を分かたぬ努力が報われ、翌年3月のジュネーヴ・モーターショーで350GTが発表されると、各誌から高評価を得た。お披露目が成功裏に終わると、いよいよ開発テストが始まった。

アンデルローニは笑いながらこう振り返った。「あの時代、走行を始めたばかりの新モデルは恐ろしく騒々しかった。フェラーリもマセラティもランボルギーニも同じ。最初の1、2台は、車と呼べるような代物じゃなかった」

ダラーラの苦闘も続いていた。「ベンチテストではエンジンは見事に回った。だが実際に走行してみると、カムシャフトがひどく摩耗してしまったんだ。私たちは仕事をやりながら学んでいった。耐久テストなどやらなかった」

それでも1964年夏には無事に最初の350GTが旅立っていった。その見事な出来栄えは誰にも否定のしようがなく、350GTをテストした『Car』誌は「こいつはフェラーリの頭痛の種になるぞ」と称えた。

350GTに続き、1966年6月からはV12を4.0リッターに拡大した400GTの提供を開始。ヘッドライトが4灯に変わった以外、外観はとんど同じだった。ほぼ同時期に、後席を設けた400GT 2+2も登場した。



350GTをドライブする
ランボルギーニ350GTを短時間でもドライブしたら、機械にもカリスマ性が宿るのだと思い知らされる。まず驚くのが、シートポジションからステアリングの角度、ペダルの配置まで、人間工学が考え抜かれていることだ。

何より予想外だったのが、その洗練された走りである。低速で走る分には芝居がかったところがない。クラッチは軽く、ステアリングも時代を考えれば正確。DOHCのV12エンジンでさえ、クルージング中は静かなものだ。ところが少し攻め始めると、二面性が露わになる。現代の基準からすれば特段に速いわけではないが、サウンドは実に壮大だ。4000rpmを越えると、こもっていた音が猛々しい轟音に変わる。何より、長距離をドライブしたくなる車だ。この点で、その後のスーパーカーモデルとは一線を画す。

生産期間:350GT 1964-67/400GT 1966-68
生産台数:350GT 120/400GT 23/400GT 2+2

INTRODUCTION Glen Waddington   抄訳:木下恵

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