1939年と現代で変わらないものとは?ある英国人アーティストの衰えない魅力を探る

Illustrations courtesy of Bodleian Library



車のボンネットマスコットについての彼の考えもある。『コウノトリ、シギ、その他細い鼻のものはお勧めしない。近くを通る通行人を刺してしまうかもしれないからだ。だがボンネットマスコットがないと愛好家たちの、アーティスティックな想像を引き裂いてしまう。だったら例えば、ゴム製の内務大臣はどうだろうか?当局への上品な賛辞で、非常用の消しゴムとしても使える』

しかし、挿絵がこれらの文をより魅力的なものにしている。驚くべきことはヒース・ロビンソンが描いた馬鹿げた架空の物たちのいくつかは、現代で現実となっていることだ。リアホイールステアリングと『ロータリーを上手く回るための、ボディーを曲げること』の二つは、21世紀に存在場所を見つけたコンセプトだ。



しかし、明らかに後者については、長いホイールベースのリムジンよりもロンドンのバスに対して議論の余地がある。現代の作家フィリップ・プルマン(ライラの冒険が有名)は、私たちが今でもヒース・ロビンソンの漫画が好きなのは、彼が書いたものを見ただけでどのように動くか理解できていた時代を思い出すからだと指摘している。

『物体自体が素晴らしいアマチュア性に満ちている』さらに彼は『木の釘でくっつけられた二つのラフな半円でできた車輪、サイズの違う大きくて、不規則な結び目で固定された長さの違うシートベルト』と加える。

ヒース・ロビンソンの世界がとても英国的である一方、テレビ番組の天才執事ジーヴスの住人たちよりも、平等主義である。ヒース・ロビンソンが描く人物たちは一貫して、現代と同じ様に新しいテクノロジーがたくさん出現した1930年代をなんとか生き延びて行こうともがいている中流階級の人々であった。彼らの混乱している様子は、姉妹書How To Live In A Flat(アパートでの暮らし方)に上手く取り上げられていた。他のなによりもどうやって狭いアパートでやりくりするかが説明されている。

これらの本は、ヒース・ロビンソンのゴルフやヒース・ロビンソンの大戦と共に、最近ボドリアン図書館によって見事に再版されている。これらの最後の部分では、その両方と、奇跡的な発明をしようと必死に努力する様子をちゃかした。しかし、第二次大戦中には、ナチがこのタイプのユーモアを描くことに対して、とてもひどい扱いをしたため、続けようとは思えなかったと語った。

第二次大戦が終わる前の1944年9月に病院で術後の合併症により亡くなった。彼の作品の評価は下がることはなく、2013年にウィリアム・ヒース・ロビンソントラストが、研究センターやミュージアム設立のための宝くじで百万ポンドの資金調達をし盛り返している。ここは、ロンドン北部ピナーにあるヒース・ロビンソンがかつて過ごしていた場所で、上手くいけば子供たちの世代にデジタル化以前の生活の喜びについて教えてくれるだろう。

Words: Mark Dixon 訳:古川浩美 Translation: Hiromi FURUKAWA (Ruote Leggendarie)

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