まるで宝探し?家中に散らばった90年前のベントレーを組み立てる!

Photography: Gerard Brown



食器棚や階段の下、ロフトやキッチンもウィリアムは探し周った。そして、ベッドルームではラジエーター、ベッドの下にはヘッドライトを見つけた。どれほど残っているのかという質問に戻すと、ウィリアムが見たところではすべてが残っているようだった。そして、ワラスの娘から丸ごと買い取ることを決めたのであった。

長い間をかけて家に通い、ボルネオ島風のガーデンなども探してみた。そして、錆びきったガレージをこじ開けてみると、シャシーが転がっていた。しかし、とても残念なことに錆びていてオリジナルのボディワークとは言えない。

「向こうにある鍵がかかっているガレージを見てみて」と言われ行ってみると、そこのルーフにはビクター・ブルームが手がけたアルミニウム製ドロップヘッドのボディワークがあった。もちろんスチュアートは、トリムすべてを取り除いていた。



「少しずつパーツを組み合わせていったら、完全に車の姿が出来上がってきた。深夜まで起きていたことも幾度となくあったし、ボディとルーフがちゃんと組み合わさるかずっと不安に思っていた。いつスクラップされてもおかしくない状態だったね。最終的にはすべてパーツを持って行ってくれと言われて、バンとトレイラーの2台で向かったんだ。とにかく本当に家中どこにでもあって、少しでも可能性のあるケースとかもすべて見たよ」とウィリアムは笑いながら話す。まるで宝探しをしている人のようだ。

「どんどん組み立てていったら、無いコンポーネントがいくつかあることに気付いた。だから、また家に戻って探すというわけさ。例えば、ドアロック、ドアヒンジのようなボディに関わるものが見つからなかった。スチュアートは絶対1つの箱にまとめてどこかにしまってあるんだと確信していたね。娘によれば、もうガーデンには何も無かったというんだけれど、僕たちはまだ全部探し切れていなかったから行ってみたらあったんだよ」

3ヵ月でボディワークを組み立て、“ベントレーの再組立て”とプロジェクトを名付けた。レストアとは呼ばない理由についてはこう語る。「最近のマーケットは変化していて、レストアするべきものがむしろ歓迎されている。レストアしたければすればいいし、コンクール級にしたいならばそれはそれでそうすればいい。僕たちの目的は可能な限りこのベントレーを“保存”することなんだ。ちょっと手を入れないと動くようにはならないけれど、最小限のことしかやらないよ」



このベントレーのエンジンには当初付いていた5年保証シールが未だに貼ってある。ベントレーモータースに車の調査を依頼したところ、ギアボックスもレアアクスルもやはりオリジナルであることが分かった。90年が経ち、このシールを見られることができるのは極めて貴重なことである。走行距離は3万9000マイルだと推測されている。

メドカルフはレストアすることを進められたが、それは拒否してあくまでも“再組立て”だと主張している。ビンテージカーの新しいあり方かもしれない。

Words: Robert Coucher 訳:オクタン日本版編集部

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