美しい氷上にクラシックカーが集まる!「無粋な方はお断り」の集いとは?後編

Kidston

サプライズはまだまだ続いた。TVドラマ『特捜刑事マイアミ・バイス(会場でことさらに印象深かったクルマについても記そう。筆者は20年以上の歳月のうちにこのクルマに数回ほど巡り合う機会に恵まれたこともあり、興味をかきたてられずにはいられなかった。このクルマは経歴も特別だ。

美しい氷上にクラシックカーが集まる!「無粋な方はお断り」の集いとは?前編

1972年、サンモリッツのスヴレッタに位置する屋敷に、最高級のランボルギーニが届いた。この屋敷は、世界でもトップクラスの取引量を誇る、とあるスーパーカー・バイヤーの冬季用別荘だった。以来47年間を経て、このクルマは初めてサンモリッツに戻ってきたのだ。届いたランボルギーニはオリジナルのミウラSVJ。初代オーナーは、なんとイランの国王陛下だった。陛下からのご注文はスタッドの付いたスノータイヤ仕様で、このたびも、久方ぶりの里帰りにあわせてすべてのタイヤが再整備されたという。

低い車体は、流麗な動きで会場の視線をくぎ付けにしながら、大きな咆哮を上げていた。最終的に、氷上に集まったクルマは、マカウスが想定していた2倍以上にあたる40台ほどにものぼった。どの参加者もくつろいだ雰囲気で、私欲、非礼、プレッシャー、ストレスなどとは一切無縁だ。ポリッシング・クロスなども見当たらず、プログラムも無ければ、あからさまなスポンサーもいない。



「入場にはバッジが必要ですよ」と会場を囲い込む係員もいない。そもそも、入場料もない。原題:Miami Vice)』に実際に登場したフェラーリ・デイトナのスパイダーモデル、アリタリア航空の外装を施されたランチア・ストラトスのラリーカー、上機嫌なエキゾーストノートを奏でるストレート・パイプ採用のフェラーリ・F50、ザガート社によって命を吹き返したきわめて稀少なザガート製ボディのポルシェ356、ビバリーヒルズの石油王に新車で納められたフェラーリ750モンツァ、そして、レーシング・ドライバー兼コレクターであるユージェニオ・アモスご自慢の深く魅惑的なロッソ・コルドバ(コルドバ風レッド)のフェラーリ275 GTB/4と続く。

しかも、ワイルドな運転で登場したランボルギーニ・カウンタック・アニバーサリーのルーフには、木製のそりが載せられている。カウンタックのオーナー諸氏よ、いかがだろうか。会場でことさらに印象深かったクルマについても記そう。筆者は20年以上の歳月のうちにこのクルマに数回ほど巡り合う機会に恵まれたこともあり、興味をかきたてられずにはいられなかった。このクルマは経歴も特別だ。1972年、サンモリッツのスヴレッタに位置する屋敷に、最高級のランボルギーニが届いた。

この屋敷は、世界でもトップクラスの取引量を誇る、とあるスーパーカー・バイヤーの冬季用別荘だった。以来47年間を経て、このクルマは初めてサンモリッツに戻ってきたのだ。届いたランボルギーニはオリジナルのミウラSVJ。初代オーナーは、なんとイランの国王陛下だった。陛下からのご注文はスタッドの付いたスノータイヤ仕様で、このたびも、久方ぶりの里帰りにあわせてすべてのタイヤが再整備されたという。低い車体は、流麗な動きで会場の視線をくぎ付けにしながら、大きな咆哮を上げていた。

最終的に、氷上に集まったクルマは、マカウスが想定していた2倍以上にあたる40台ほどにものぼった。どの参加者もくつろいだ雰囲気で、私欲、非礼、プレッシャー、ストレスなどとは一切無縁だ。ポリッシング・クロスなども見当たらず、プログラムも無ければ、あからさまなスポンサーもいない。「入場にはバッジが必要ですよ」と会場を囲い込む係員もいない。



そもそも、入場料もない。湖上表面に楕円形に付された目印に沿って、参加者は数ラップほど周れるようになっており、「来年も地元の人たちにこの催しを受け入れてもらうため」に、無理をせず、気楽に周るようにうながされた。ドライバーたちは皆うなずきながらも、男子学生のようにニヤリといたずらっぽく笑う。これまでに、クラシックカーで氷上を走る試みがあっただろうか。筆者は未体験のように思う。いずれにしても、なんとも荒唐無稽で可笑しい。

実際の走行では、パワーもスキルも必要とせずにテールアウトやドリフトが頻発した。まるで、ラリー・モンテカルロを走破するサンドロ・ムナーリになったかのようだ。筆者は、最近ふたたび入手を果たした家族用のメルセデス・ベンツ・ガルウィングで参加したが(このエピソードの披露は別の機会に譲ろう)、愛車もすっかり場になじんでいた。会場の雰囲気や背景は、映画シリーズ『ピンク・パンサー(シリーズ原題:The Pink Panther)』のアルプス保養地でのシーンを思い起こさせる。パレス・ホテルで開催されたガラ・ディナーで繰り広げられる、あのシーンだ。



授賞式では、サンモリッツ・スピリットの結集として、古式ゆかしいヴィンテージのベントレーが受賞した。また、ランボルギーニ・カウンタックと華麗なイタリア人オーナーも、インスタグラム投稿の尽力が称えられて受賞を果たした。夜ふけになると、例のミウラSVJ、フェラーリ275 GTB/4、そしてガルウィングが、ホテルの入り口に護衛のように並んだ。

一方で我々オーナー陣は、ブリジット・バルドーの元夫にして稀代のプレイボーイ、ギュンター・ザックスが、サンモリッツに設立したかの有名なドラキュラ・クラブで過ごしていたようなひとときに張り合おうとベストを尽くしていた。我々は恐らくギュンターには叶わなかっただろうが、挑戦の機会は来年以降も毎年ある、というものだ。

オクタン日本版編集部

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