生半可なものではない・・?ロードカーの皮を被った究極のスポーツカーに試乗!

Photography:Paul Harmer



車輌総重量は1061㎏と軽く、およそ300lb-ft(約41.5kgm)ものトルクが低回転域から得られるので、GT40のスタートは容易だ。だがステアリングはめっぽう重く、低い視点からの運転にも慣れる必要がある。フロントフェンダーの峯は視界の中にあるが、ノーズの位置はまったく確認できず、後方に関しては3/4の視界もない。

ギアをゆっくり変え、イギリスの細い田舎道を走っていると、フォードの温和なエンジンにも助けられ、次第にリラックスしてくる。ただし、対向車線の死角からレンジローバーでも出現すれば、その巨大な姿に圧倒されよう。

 
なかなか難しいギアシフトと視界が充分でないことから、GT40のドライビングには適度な集中力を必要とする。しかし、道が開けてきたらなら、本当に気を引き締めなければならない。3速にシフトダウンし、スロットルペダルを踏み込んで行くと、この車の血統が俄に姿を現してくる。ラック・アンド・ピニオンの重いステアリングは、温まってきたダンロップLセクション・レーシングタイヤ(前輪:5.50×15、後輪:7.00×15)と、ダブルウィッシュボーン・サスペンションとの間でなにが起こっているのかを正確に伝え始める。また、Mk.Ⅲに備わるブレーキサーボ付きディスクブレーキは強力で、信頼感がぐっと増す。
 
5リッターのプッシュロッドV8エンジンは大人しく、マナーもいいので扱いやすい。パワーは306bhpと発表されているが、実感としては正味250bhpくらいではないかと思われた。強大なトルクゆえに、頻繁にギアチェンジする必要はないが、練習を積んでコツを掴むとギアチェンジはだいぶ楽になった。GT40に慣れてくると、実際にはこれが荒々しい野獣ではないことが分かってきた。野獣と呼ぶにはシャシーとパワートレインが洗練されすぎており、次第にミッドエンジンの車を大きなレーシングカートのように運転できるようになった。対向車の大きさに慣れてきた頃には、軽量で反応の良いGT40でのハイスピード・コーナリングが快感になり、短いストレートでも速度を急速に上げてしまった。このオリジナルで稀なMk.Ⅲは極めて高価だから(数百万ドルはするだろう)、あまり調子に乗ってはならないのだが。
 
ベンチレーターが全開でファンが力強く回っていれば、温暖な気候なら車内も快適だ。しかし、ミドシップのエンジンから前方のラジエターへと送られる冷却水パイプがセンタートンネルとバルクヘッドを通るため、エンジンが暖まると、車内が猛烈に暑くなることで知られている。エアコンを搭載したMk.Ⅲもあるというから、朝方の爽快な時間帯以外にも乗ろうという場合には、検討してもよいかもしれない。
 
GT40 Mk.Ⅲは、コンペティションカーを公道上でも使いたいというコンセプトにおいては、フェラーリF40の先駆者である。ツインターボチャージャーを備え、遙かに設計年時が新しいF40ほど激しくはないが、同期のランボルギーニ・ミウラよりも遥かにエキサイティングだ。GT40はロードカーの皮を被ったレーシングカーであり、F40やミウラは純粋なロードカーであるから、比較することには無理があるのだが。

オクタン日本版編集部

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