身震いするほどの凄まじさ!自然吸気V12を積む超絶マシン、パガーニ・ウアイラR

Pagani Automobili


次にもちろんエンジンだ。すでに限定車ウアイラBCロードスター用としてメルセデスM158EVO改めパガーニV12というエンジンをHWA(AMGの創始者ハンス・ヴェルナー・アウレヒト率いるレーシングカーおよび特殊モデルの開発設計会社であり、メルセデスワークスのレーシングチーム。過去にはメルセデスのDTMやフォーミュラEを、現在ではフォーミュラ2&3チームを運営)と共同で開発し、ウアイラ後継モデルのC10まで使うことを明言したパガーニだったから、ウアイラR用もその派生エンジンかと思いきや、全く違った。オラチオが最高のパフォーマンスを発揮する自然吸気エンジンの開発にこだわったため結局HWAは全くの白紙から開発することになったのだ。

最新の技術で最高の性能と魅力、サウンドを持つ、80年代のF1のようなエンジンが欲しい。最高出力は既存のモデルより大きく(これまでの最大は800馬力)、そして重量は250キロ以下に抑えて欲しい。HWAは予想を上回る開発を成し遂げた。ツインターボではなく6リットルの自然吸気で850cvを達成し、エンジン単体重量はなんと200キロを切った(198キロ)。もちろんパガーニ史上最も軽いエンジンで、これにはさしもの開発陣も大いに驚いたという。また、トラック専用マシンのハイチューンドエンジンというとサービスサイクルの短さが懸念されるが、新たにパガーニV12-Rと名付けられたこのエンジンはなんと1万キロというから、レーシングエンジンの5倍、鈴鹿サーキット1600周くらいはオーバーホール不要ということになる。

これに組み合わせるトランスミッションももちろんパガーニとHWAのコラボレーションによる新設計で、トリプルメタルレーシングクラッチの6速シーケンシャル・ノンシンクロのドグミッションとした。重量はこれまた軽く80キロ。何より、フリクションロスが5%以下に抑えられている(通常は10%程度)という点にも注目したい。

エグゾーストパイプもマニア垂涎だ。白い耐熱セラミックコートされたインコネル625/718アロイパイプは、ロードカーのおよそ1/3の薄さで、ほとんどF1マシン用と言っても過言ではない。

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モノコックボディには凄まじく高価なチタンカーボン(HP62-G2)とトリキシャルカーボン(HP62)を使うが、デザインは完全に新設計でパッセンジャーシートをインテグレートする。前後のチューブラーサブフレームはクロームモリブデン鋼製だ。軽量化はもちろん、安全性にも特に注意が払われており、FIA規定より厳しいとされるダイムラーメルセデスの基準をクリアした。そのほか、鍛造アルミの足回りやブレンボCCM-Rブレーキ、19インチのPゼロスリック専用タイヤなど語るべきポイントは他にもたくさんあるがハード面での説明はこれくらいにしておこう。



最後にもう一つ、パガーニがこれまで以上に力を入れていくと断言しているのが、顧客エクスペリエンスの機会を増やすことだ。特にトラック専用マシンの場合、サーキットでのドライブ“しか”できない。そこでパガーニオーナーがそのパフォーマンスを存分に味わうオフィシャルな機会を世界中で、もちろんアジアや日本でも、開催していくという。

扱いやすさと安全性に優れた、自然吸気V12を積む超絶マシン。乗ることは叶わずとも、早くそのサウンドを生で聞いてみたいものである。本社から送られてきたエンジンテストベンチでのサウンドトラックは、それを聴きながらフランチャコルタを飲みたいと思ったほど。全身が蕩けそうになった。



文:西川 淳 Words: Jun NISHIKAWA


※1 日本円換算:約3億3800万円+税(1ユーロ=130円として換算)



Pagani Huayra R ※メーカーによる目標推定値
エンジン:パガーニ製 V12-R 6.0リッター 自然吸気12気筒V型
最高出力:850 HP (625 kW)/8250 rpm
最大トルク:750 Nm/5500~8300 rpm
トランスミッション:後輪駆動
ギアボックス:6段シーケンシャル・ノンシンクロ・ドッグリング・ギアボックス
ブレーキ型式:ブレンボ製CCM-Rベンチレーテッド・ディスク: フロント 410x38 mm、モノシリック
6ピストン&キャリパー、リア 390x34 mm、モノシリック 6 ピストン&キャリパー
ホイール:APP 製鍛造モノシリック・アルミ合金: フロント19インチ、 リア19インチ
タイヤ&型式:ピレリPゼロ スリックバージョン ドライ&ウェット
フロント 275/675 R19インチ、リア 325/705 R19インチ
サスペンション:鍛造アルミニウム合金独立ダブルウィッシュボーン式、
ヘリカルスプリングと電子制御ショックアブソーバー装備
シャシー: モノコック、パガーニ製カーボチタン HP62 G2 およびカーボトリアックス HP62、
CrMo 合金鋼製のフロント及びリアチューブラーサブフレーム
乾燥重量:1050 Kg (2314 lb)

文:西川 淳 Words: Jun NISHIKAWA

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