車もレントゲン検査 !?「物事の姿をありのままに見せる」斬新なアートの世界

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これを考慮し、当然のことながら多くの対策を取っている。X線が壁を貫通しないよう、スタジオには「lignacite」と呼ばれる厚さ10cmの建材用ブロックが使用されている。床はX線を吸収する高密度コンクリート製、X線エリアの出入口を遮断する鉛と鋼鉄製の扉の重さは1250kg。極めて高い放射線レベルを使用することは、人間や動物を被写体にする際に、骸骨または死亡して間もなく、寄付という形で提供された遺体を使わなければならないことを意味する。「芸術や科学のためにご自身の遺体の寄付を希望される方もいます。また、ご遺体の寄付がある場合には、私は入手希望者として手を挙げます」。

写真はそれぞれ、35cmx43cmフィルムで比率通りに撮影される。電球などの小さい物体を撮影する場合にはスペースの問題はない。ただし、フォルクスワーゲンのビートルの撮影となると、ヴィージー氏は車一台を解体し、各部品を個別にX線撮影しなければならず、作業に何カ月も要する。

「車を一度でX線撮影するのは技術的には可能です。しかし非常に雑多な結果となるでしょう。すべてを解体し、部品をひとつひとつX線撮影し、可能な限りの美しい仕上がりを目指すのです。それから再度組み立て直します」

撮影したX線写真を最終的に1980年代のドラムスキャナーに通してデジタル化する。氏によると、ドラムスキャナーは「スキャナー中のスキャナー」であり、過去に試したどのスキャナー機器よりも詳細を見事に演出し、「最も素晴らしい、高解像度」画像を可能にするのだそう。デジタル化された画像は PCで読み込み、重複したX線部分を削除しつつ、丁寧に組み合わせられる。作品の仕上がりからだけでなく、作品作りの行程にも多くの喜びを感じると語っている。



「 慣れ親しんだ仲と思っていても、背後からふいに攻撃をされるような驚きがあるのがX線の楽しみ。間違えることもあります。誰でも失敗はするものです。失敗から学んでいくのです。露出過度であったり露出不足であったり、色のトーンが十分に出ない時もあります。その点、写真撮影と似ていますが、X線の場合は透明な画像なので、焦点がないのです。照明具合も関係ありません。X線は独自の発光スペクトルを持っていて、人間の視覚では確認できないのです」

「だからこそ何度も何度も実験を繰り返します。写真家と同じように、露出を調整してみたり、被写体までの距離を変えてみたり、違うフィルムで撮影してみたり。写真家がレンズやフィルムやISO感度を変更するように、私も色々と試行錯誤をして、最高の写真を撮ろうとしているのです」と締めくくった。

 

オクタン日本版編集部

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