「もしも」から生まれた究極のポルシェ993|ギュンターワークス

Gunther Werks

MODERN RESTORATION_04
新世代のビルダーが作るレストレーションの新しい形

「レストモッド」という一大ムーヴメントをひもとく特集、第4回はギュンターワークスを紹介する。カーボンが多用されたポルシェ993。そんな一台が誕生したきっかけは、ある人物がふと思いついた「もしも」だった。そこから、決して妥協が許されないプロジェクトが始まった。


「もし、"お金に糸目をつけない"究極のポルシェ993を作ることができたら?」そんな、「もしも」というひとつの仮説から、ギュンターワークスによるカーボンボディの993プロジェクトがはじまった。

この発起人はドイツ系アメリカ人のピーター・ナム(43歳)。最も先進的で革新的な品質のカーボンファイバー製品を提供するグローバルリーダー的存在ヴォルステイナー社の創設者でもある彼は、20代の頃から車の製造、デザイン、開発に携わってきた。その「もしも」を実現したくなるのは自然の流れだろう。車を愛し、様々な観点から接してきた彼だからこそ現代における車の楽しみ方に対して思うところがあったそうだ。



「現代の車はデジタル化しすぎて、コンピューターに操られているように感じるのです。車とドライバーはつながりを失っているように感じます。私たちは、最新のテクノロジーを備えたアナログカーを作り、より感情的なドライビング・エクスペリエンスを隠すのではなく、強調したかったのです」と彼は言う。こうした想いから、最後の空冷ポルシェとしての本質を損なうことなく、考えられるすべての方法を用いながらより良いものを作るというプロジェクトに至ったのである。

ギュンターとあまり耳馴染みのない社名は、「いい仕事ができなければ、辞める。妥協はできない」と言葉にしたアメリカ人エンジニア、ギュンター・F・ヴェントに由来する。スペースシャトルのミッションにも携わっていた人物であり、妥協を許さず、完璧を求めるという姿勢が、彼らの理念と重なったことから名付けられたそうだ。彼らのクラフツマンシップは「妥協」がなく、"ドナーカー"のボディとシャシーを、細心の注意を払って分解し、新品同様の状態にレストアする。カーペットや配線を含むインテリアを取り除いた後、車両全体をメディアブラストで素地に戻す。その後、ダイレクトプライマーで下地処理をしてから塗装の段階へ入る。最新の塗料を使用することで、オリジナルに比べて軽量化と耐久性の向上が図られている。軽量化のために、ルーフも含めてすべてのボディパネルにプリプレグのカーボンファイバーが使用され、カーボンバケットシート、カーボンリアシート、カーボンダッシュボードなど、車内に至るまでも徹底され、その車重は約1247kgとなっている。





オーナーはアルカンターラ、カーボンファイバー、ビレットアルミニウムのアクセントでインテリアをカスタマイズできる。

また、業界の名だたる企業と協力している点においても、妥協しないことを証明している。タイヤはピレリ製、サスペンションはJRZ製ショックと993専用のカスタムパーツを用意した。ブレーキは、F1マシンに搭載される技術を応用したブレンボ製「CCMR」カーボンセラミックディスクを採用し全体のバランスを取っている。サスペンションの取り付け位置、ホイールやタイヤのサイズ、ドナーカーとのバネ下重量の違いなどのすべてを考慮して設計されている。1台あたりにかけられる製造時間は4000時間~5000時間だという。

エクステリアもホイールやボディカラーなど多数のオプションが用意される。

クラフツマンシップはそれだけにとどまらず、手縫いのレザーシート、アルカンターラ製の埋め込み式ルーフ、自社設計のLEDヘッドライトとテールライトなど様々なパーツがギュンターによって開発された。外装内装の仕様はオーナーの好みで変更できるが、搭載するパワートレーンに関しては一貫して435hpを発揮する4.0リッター水平対向6気筒エンジン、6段マニュアルトランスミッションである。これはポルシェの歴史への敬意を示している証でもあろう。

リアフードを開けると、美しい4リッター空冷水平対向6気筒エンジンが姿を現す。すべてがオリジナルデザインのDNAを継承しつつ、敬意を持ってリマスターされている。

しかし、ギュンターは過ぎ去った時代を懐かしむためではなく、「もしポルシェが空冷の道を歩み続けていたらどうなっていただろうか?」を具現化するためこのGW 993を生み出した。純粋で没入感のあるドライビング・エクスペリエンスをもたらし、他の車では得られないようなフィーリングをドライバーに与えたかったのだという。

今後の予定をピーターに聞いてみると、「まだまだ多くのモデルが登場する予定で、今後10年間の生産計画がすでに立てられています。私たちはEVテクノロジーに加えて、最新のテクノロジーを使用したドライビング・エクスペリエンスの改善方法を模索しています」と将来に向けた期待を語ってくれた。

オクタン日本版編集部

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