見た目からは想像できないパワーを秘めた「羊の皮を着た狼」|メカトロニック

Mechatronic

MODERN RESTORATION_02
新世代のビルダーが作るレストレーションの新しい形

レストモッド。多くの場合、レストレーション&モディファイドの略として解釈されている。この一大ムーヴメントをひもとく特集、第2回はメカトロニック。このW113、一見すればエレガントなスタイルを持つクラシックカーだ。しかし、ボンネットの中を覗いてみると、思いもよらぬパワーを秘めている。その正体とは一体…


「レストモッド」とひとことにいっても、そのスタイルはいくつかある。主には2パターンに分けられるだろう。クラシカルな見た目はそのままに、エンジンを最新のハイパワーにするというパターンと、ボディタイプごとかえて新たにデザインするというパターンだ。その前者を代表する存在が、ここに紹介する1997年にドイツで設立された「メカトロニック( Mechatronic )」である。クラシック・メルセデス・ベンツをベースにレストモッドすることで知られるそれは、シュトゥットガルトの北に位置するプレイデルスハイムを拠点としており、6000㎡以上の敷地を誇る。広大な敷地内には最新設備の整ったボディショップ、エンジン、インテリアなどの部門が設けられている。現在は約40名のスタッフで構成されており、長年の経験をもつスペシャリストもいれば、才能をもった若い人材も在籍している。専門知識を社内に残し、次世代に引き継いでいくために、メカトロニックは独自の研修プログラムも設けているそうだ。この「次世代に引き継ぐ」という概念にも相応するが、メカトロニックでは「持続可能なドライビングプレジャー」を届け続けることを最大の目的としている。



メカトロニックの創設者は、フランク・リカルト。現在52歳の彼自身、エンジニアとしての知識をもっていたが、20数年前にこのビジネスをはじめるにあたってさらに熱心に勉強し、クラシックな見た目はそのままの"最新メルセデス・ベンツ"を生み出した。ラインナップはW111をベースにする「M-COUPE」、W113をベースにする「M-SL」と2モデル用意されている。どちらも一見しただけでは、美しいクラシック・メルセデスに見えるだろう。



しかし、どちらのボンネットの下にも伝統の直列6気筒エンジンはない。M-COUPEには5.0リッターM113V8エンジン(360hp/265kW)、M-SLには4.3リッターM113V8エンジン(279hp/205kW)が搭載され、最高速度は2モデルとも233km/hに達する。その優雅な見た目からは想像できないパワーだ。しかし、彼らがおこなうのは、単なるエンジン載せ替えではない。当然のことながら、ハイパワーエンジンを搭載する分、ボディ全体における改良が必要になる。このために開発された強化フレーム、ボディパネル、ギアボックス、ブレーキ、改良サスペンションなどを備えており、そのボディは圧倒的に現代に合ったものになっている。

M-COUPEには、360hpを発揮する5リッターエンジンが搭載される。ぱっと見では、ボンネットの下にはこんなエンジンがあることなど想像も付かない。

M-SLに搭載されるのは4.3リッターM113V8エンジンだ。

また、メカトロニックの"レストモッド"に対する高い基準は、サスペンションにも反映されている。フロントはダブルウィッシュボーン式サスペンション、リアはハイドロニューマチックデファレンシャルスプリングとレベルコントロールを備えたシングルジョイントスイング式サスペンションを採用し、フロント/リア共にコイルスプリングを用いることで高い快適性と安全性を確保している。ブレーキはエンジン性能とサスペンションに合わせて高精度に調整されており、最高の安全性とブレーキ性能を保証する。フロントには、W126に由来する大型の2ピストンキャリパーがドリルドディスクブレーキと組み合わされ、リアにはW111の洗練された標準ブレーキシステムを採用している。

性能はさることながら、「ドライビングプレジャー」には重要な快適性をもたらすため、エアコン、シートヒーター、サウンドシステムなどのアイテムもカスタマーの要望に合わせてリファインされる。最新技術を採用しながら、インテリアもオリジナルに忠実に作られているので、何もいわれなければ綺麗にレストアされているクラシックカーだと思うはずだ。インテリアのカスタムはレザーシートとカーペットのカラー、ウッドパネルの模様などがそれぞれ豊富に用意され、カスタマイズ可能だ。

ウッドパネルのカラーや模様も選ぶことができ、好みのクラシックスタイルへと仕立て上げることができる。セレクターの雰囲気も見事にエレガントなままである。

ウッドはオリジナルにならい、ダッシュパネルにも用いられ高級感溢れる車内となっている。サウンドシステム、エアコン、シートヒーターなどは顧客の要望によって備えられる。オリジナルの機能性を忠実に守りたいという方は、もちろんオプションなしでも問題なし。

1台あたりどれほどの時間がかけられて製造されているのかと聞いてみると、仕様によって異なるもののM-COUPEで約2500~3000時間、M-SLで約2000時間だという。ちなみに、塗装に関してはメルセデス・ベンツ純正色とメカトロニックオリジナルカラー合わせて60色が用意されている。もちろん、ソフトトップ、ハードトップの色も選択可能。ブレーキキャリパーは標準でブラックに塗装されているが、他の色を選ぶこともできる。すべて組み合わせれば、カスタムの可能性は無限だ。2モデルとも自分好みにカスタムし、購入するというファンも少なくないだろう。

また、現在「プロジェクト107」と称した新モデルの開発が進められている。こちらはパンデミックの影響により、発表時期が遅れているが2021年中には発表予定とのことだ。それもまた、新たな車の楽しみ方を提示してくれるものであることに違いない。


オクタン日本版編集部

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