伝統と職人技の奥深さを求めて|マクラーレンGTで鍋島焼の秘窯を探訪する

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秘窯の里では風鈴の音色がお出迎え


翌日はいよいよ秘窯の里、伊万里市大川内山へ向かった。宿からしばらく走ると大通りにはあちこちに“伊万里焼き”の看板や窯元やギャラリーが目につくようになる。しかし目指す秘窯は街中から離れ、田園風景が広がるその先、関所跡を抜け伊万里焼きの施された橋を渡った先に突然たくさんの窯元が軒を連ねる一角が現れる。



西暦1600年(江戸時代)鍋島藩二代目鍋島光茂がこの地に大名や将軍家、朝廷に献上するための磁器を製造する藩窯を置いた。そこではより高い品質の向上と技法の維持に努め、技術の漏洩を防ぐためにこのような環境下に置かれていたようだ。交通手段に恵まれた現代でさえ車で向かっても秘境感たっぷり。当時はさぞかし奥深いこの地に、選ばれし職人たちがひっそりとひたすら伊万里焼き製作を行っていたかと想像すると陶芸ロマン心がふつふつと込み上げてくる。鍋島焼は明治維新まで御用窯として製作されてきた磁器は明治維新以降、その役割を終え民窯として個々が独立し現在に至る。

車を停めマクラーレンGTのディヘラルドドアを開け、降り立ったときの伊万里焼きの無数の風鈴がそれぞれの音色を奏でていたことが忘れられない。食器や壺などのイメージが先に立っていたものだから、よけいに音色が印象に残る。



奥に行けば藩役の屋敷跡や火を祀る愛宕神社などもある大川内山エリアには観光マップで数えただけでも30以上の窯や工房があり、その多くがお店を構えている。伊万里・鍋島焼と言ってもそれぞれに個性はあるだろうから時間が許すかぎり巡るのがおすすめだ。

個性ある窯元が軒を連ねる大川内山エリア。お気に入りの器を求めてそぞろ歩きするのも楽しい。8月31日までは伊万里大川内山風鈴まつりも開催されている。

ぶらぶらと歩きながら、今回はそのうちの二軒の窯元の方にお話をうかがうことができた。



虎仙(こせん)窯の番頭兼絵師の川副隆彦さんは、かつては庶民は手にすることの出来ない将軍や大名だけが使うことのできる最高品を“大名たちの日用品”と表現をしながら鍋島焼の歴史を振り返ってくれた。こちらでは現在は伝統的な食器のほか、「KOSEN」という新ブランドを立ち上げ、色鍋島、藍鍋島、鍋島青磁を用いたモダンな食器や雑貨の製造を手がけている。







ショールームでは鍋島青磁を使った湯飲みを紹介してくださった。鍋島青磁はここでしか採掘できない青磁の天然鉱石を用いた釉薬(ブレンドしていない)を使った希少性とその色合いが特徴でもある。優しい青の艶やかさも目を引くそれは、これまでは釉薬が溜ることが欠点でもあったところをその溜りをデザインと機能、スタッキング(重ねる際のスタックさせる)に活かし、一つのモダンな美しさのみならず、重ねて積んだ際の佇まいもまた美しい。川副さんは300年以上の歴史をこの先の100年の未来を見据えたプロジェクトも進めている。



川副さんは虎仙窯のお仕事のほか、伊万里・鍋島焼の100年後の未来を見据えた100選プロジェクトも進めている。現在は鍋島藩窯 百撰としてオンラインで風鈴市を開催中。鍋島藩窯百撰 - 「鍋島愛」を全力で伝えるオンラインメディア

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