スポーツスターSが拓く次世代ハーレーの未来とは

HARLEY-DAVIDSON

今年7月、ハーレーダビッドソン(以下HD)は新型スポーツスターを発表した。日本においてHDをより身近な存在とし、老若男女にHDの楽しさを広めたそのアメリカンライトウェイトスポーツバイクはエンジン、フレーム、スタイルのすべてを一新。ここでは、その新しいスポーツスターを通してHDの未来を想像してみる。



新しくなった「スポーツスター S」の進化の歩幅は、想像を大きく超えていた。 いや進化の域を超えて、新たな種を誕生させたと言っていいだろう。「スポーツスター S」はそれほど、これまでのスポーツスターから変わっていたのだ。これはハーレーダビッドソン(以下HD)の並々ならぬ決意の表れだ。HDは、本気で変わろうとしている。

4インチ丸型 TFTスクリーンを搭載。異なる出力特性を持つ選択可能な3つのライディングモードを選択可能。可変バルブタイミング機構も採用し、低中回転域と高回転域でバルブタイミングをシームレスに変更できる。
 
兆しはあった。2018年7月にHDが発表した、2018-2020年の中長期経営戦略"More Roads"のなかでは、これまでとは異なるアプローチで、異なる価値を持つ二輪車を開発し、アメリカ以外の世界中の二輪市場でシェア拡大を図るという目標を発表したのだ。そして"バイク"に限らない電動二輪車とともに、新しい水冷エンジンを含む、新プラットフォームを採用したコンセプトモデルも公開した。そのなかの1台が、HD初のアドベンチャーモデル「パンアメリカ1250」であり、この「スポーツスターS」だった。
 
そのHD製の電動バイクやアドベンチャーモデル、また新しい水冷エンジンは大いに話題となった。そして電動バイクや「パンアメリカ1250」を、経営戦略通りに市場に投入。凄まじい勢いで進化が加速する電動モビリティ市場の中において、 また電子制御技術やADAS(先進運転支援システム)などを搭載した、いま二輪でもっとも先進的なアドベンチャーカテゴリーにおいても、ジャーナリストや顧客から上々の評価を得るとともに、好調なセールスを記録している。

サイレンサーとシートカウルは、フラットトラックレースで活躍したHDのスポーツモデル「XR750 」をモチーフにデザイン。小径で極太の前後ホイールは往年のレーサーレプリカ的スタイルの"ボバー"を踏襲。
 

HDはこれまで、電子制御技術を頼るのではなく、エンジンやサスペンションのメカニズムによってのみ生み出されるフィーリングこそがHDを造り上げるとして、伝統的なバイク作りに固執していただけに、その決断は驚きだった。 そしてその驚きは、 二輪市場におけるHDの立ち位置を大きく変えた。
 
そして次に登場したのが「スポーツスターS」。1957年に初代モデルを発表し、それ以来続くHDの看板モデルファミリーの最新モデルとしての登場である。新しいカテゴリーにチャレンジした「パンアメリカ1250」とは、その立ち位置が違う。スポーツスターは、大排気量エンジンに別体ミッションを組み合わせるビッグツインファミリーとは異なり、吸排気バルブをそれぞれ駆動する2つのカム×2気筒分=4カム仕様のミッション一体型エンジンで、軽量コンパクトで高効率であることから、HDのスポーツ部門を担ってきた。またビッグツインエンジンとは異なる軽妙なフィーリングで、日本やヨーロッパでHDのバリューを高めてきた。

エンジンは「パンアメリカ1250」と同系統の挟角60度水冷DOHC4バルブエンジンを、スポーツスターのキャラクターに合わせ、トルク重視の特性を造り上げている。エンジンのペットネームの最後に付く"T"はトルクを意味する。フレームはエンジンをメインメンバーとし、エンジンの2つのシリンダーから前に伸びるフロントフレーム、エンジン後端に結合しリアサスペンションの車体側の受けとなるミドルフレーム、そしてシートレールを含むリアフレームの三部構成となる。
 
その最新モデルは、冒頭でも述べたとおり、エンジンもフレームもスタイリングも、60年を超えるスポーツスターの生態系とは異なる種から誕生している。挟角60度水冷DOHC4バルブエンジンは、可変バルブタイミング機構も搭載。 同系統のエンジンを搭載したパンアメリカ1250のエンジンフィーリングから想像するに、それは最新の内燃機エンジンテクノロジーと制御技術を駆使して、まったく新しいHDの世界を構築しているだろう。しかもそれは、活況を呈するネオクラシックカテゴリーにおいても、存在感を発揮するだろう。
 
HDはこれまで、ヘリテイジカテゴリーの雄であった。しかしパンアメリカ1250や新しくなったスポーツスターSの登場で、異なる複数のカテゴリーでシェアを獲得することが可能なマルチブランドへと進化を遂げたことになる。進化したスポーツスターSの登場は、その狼煙というわけだ。



文:河野正士 写真:高柳健 Words:Tadashi KONO Photography:Ken TAKAYANAGI


ハーレーダビッドソン スポーツスターS

エンジン:レボリューションマックス1250T /水冷 V 型2気筒 DOHC 4バルブ
総排気量:1,252cc 
ボア×ストローク:105.0×72.3mm
圧縮比:12.0
最高出力:90kw(121PS)/7,500rpm 
最大トルク:125N・m/6,000rpm
全長×全幅×全高:2,270×843×1,089mm
ホイールベース:1,520mm
シート高(無負荷状態):755mm
車両重量:228kg
レーク:30°
トレール:148mm
フューエルタンク容量:11.8L
フロントタイヤ:160/70TR17 73V
リアタイヤ:180/70R16 77V
車両本体価格(税込):185万8000円(ビビッドブラック)、188万7700円(ストーンウォッシュドホワイト、ミッドナイトクリムゾン)

文:河野正士 写真:高柳健 Words:Tadashi KONO Photography:Ken TAKAYANAGI

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