ラグジュアリー・ブランドだからこそできること|ベントレー・ベンテイガ・ハイブリッド

Photography:Masaya ABE


時にパワフル、時に滑らか


Dレンジに入れて走り出した瞬間、いい意味で期待が裏切られた。“ハイブリッド”と聞いて想像するエコカーらしい走りではなく、ベントレーを名乗るのにふさわしい力強い走りっぷりを披露したからだ。スーッと滑らかに走る和製ハイブリッド・モデルと比べると、ベンテイガ・ハイブリッドは、燃費性能を重視しつつも、いざ、パフォーマンスを発揮して走ろうとすれば、にわかにスポーティな走りに転じる。最高出力340ps/5300-6400rpm、最大トルク450Nm/1340-5300rpmを発揮する3リッターV6ユニットに、最高出力128ps、最大トルク350Nmを生む電気モーターを組み合わせることにより、最高出力449ps/最大トルク700Nmのシステム出力を生む。そのスペックから想像するだけでも、十分にその力強さは伝わるはずだ。

エンジンは2995cc V型6気筒ターボチャージャー付。W12やV8に比べてよりコンパクトであり、搭載位置はよりセンターに近い。専用設計の充電ユニットを使用することで、約3時間でフル充電が完了する。完全なEV走行は約50km可能であり、通常の街乗りであればすべてモーターで移動できる。

センターコンソール上にあるセレクターで、EV走行モードを選べば、電気モーターだけで走ることができる。早朝の住宅地を静かに走る際にも有効だし、電気モーターならではの加速感を味わうこともできる。ベンテイガに搭載されるハイブリッド機構は、一回の充電で50kmのEV走行が可能なPHVゆえに、日常的にはEVとして使うこともできる。それ以上の距離を走りたかったり、パワフルな走りを望むなら、ハイブリッドモードを選べばいい。電気モーターでの走行を優先しつつ、V6エンジンと協調して、パワフルな走りや長距離ドライブに対応する。充電を優先するホールドモードは、日本ではあまり活躍するシーンがないが、市街地がEV走行に制限される国が増える中、有効なモードだろう。

ハイブリッドが他グレードと異なるのはメーターパネルやセンターモニターに表示される様々な充電に関する情報である。逆にそれ以外はほとんどハイブリッドであることを意識せず走行することが可能だ。

気持ちよく伸びるパワートレインに気を良くして、鎌倉まで足を伸ばしてみた。工事で首都高の路肩が狭まっても、レーンキープアシストの助けを借りれば車幅を気にする必要もない。前方の車両に追従するアダプティブクルーズコントロールを始動すれば、前の車両に追従してくれるのも安心して走れる一因だ。古都の狭い道では、全長×全幅×全高=全長5,125×2,010×1,710mmのスリーサイズを持つ巨体を持て余すのではないかとも危惧したが、実際に北鎌倉あたりの入り組んだ地域を走っても、もたつく印象はなかった。運転席からの見晴らしがよく、見切りも良いため、ボディサイズから想像するよりは取り回しが良いからだろう。

このアングルから眺めていると、フロントからリアタイヤアーチに流れるプレスラインとテールランプとのバランスは、コンチネンタルGTのデザインとほぼ共通していることがよくわかる。

ひとしきりドライブを楽しんだあと、お気に入りのカリフォルニア発のカフェで小休止。産地にこだわったシングル・オリジンのコーヒーを片手に、シンプルなワッフルを頬張る。コロナ禍で海外渡航が制限される中であるがゆえに、欧州製ラグジュアリーSUVで海岸線をドライブして、カリフォルニアのセレブリティ気分に浸るのも悪くはない。駐車場に停めた「ベンテイガ・ハイブリッド」を眺めていると、やはり、エクステリアの印象はそれほど押し出しが強くなく、鎌倉の自然にも溶け込んでいる。それでいて、室内は、自分自身とパッセンジャーのためだけのラグジュアリーな空間が広がる。車外を歩く人に主張するよりも、自分とゲストだけが包まれる居心地の良い空間に価値を見出す。しかも、その空間で移動する際の環境負荷にも配慮がなされている。それこそが、エシカルな時代におけるラグジュアリーであり、今の時代におけるグッドバリュー・フォー・マネーなのだ。


ベントレー・ベンテイガ ハイブリッド
全長:5,125×全幅1,995×全高1,740mm ホイールベース:2,995mm 車両重量:2,648kg 燃料タンク容量:75ℓ
エンジン形式:Eモーター+3.0リッター V6ターボチャージャー付
排気量:2,995cc 最高出力:330kW(449ps)/5,750-6,000rpm
最大トルク:700Nm トランスミッション:8段AT
0-100km/h加速:5.5秒 最高速度:254km/h 価格:2269万円(税込)


文:川端由美 写真:阿部昌也 Words:Yumi KAWABATA Photography:Masaya ABE

文:川端由美 写真:阿部昌也

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