1973年ポルシェカレラRS 2.7の腐敗と闘う|『Octane』UKスタッフの愛車日記

Delwyn Mallett

『Octane』UK版スタッフによる愛車日記。今回は1973年 ポルシェカレラRS 2.7のサビと奮闘中のデルウィン・マレットのレポートをお届けする。



ポルシェカレラRS 2.7のボディ全体を分解してみて、あまりの腐敗のひどさに落胆した。そしてスティーブ・ケルティに依頼し、“壊死”した部分を除去してレストアの手術に取り掛かることにした。

その後訪れた『クラシック・ファブリケーションズ』の本拠地であるデボン州のダンケスウェルで、さらに大きな衝撃を受けた。私の愛車のRSの、ほとんどの部分がなくなっていたのだ。いや、これはあらかじめ想定しておくべきだったかもしれない。

交換用パネルの大きさは見ていたのだが 、古いパネルに新しいものを入れ替えた部分にできた大きな空間を見て、私はさらに落胆した。スティーブが苦労して何百ものスポット溶接部にドリルで穴を開け、インナーウィングを分離してくれた。ノーズとトランクのフロアを切り取った後、フロントエンドはほとんど残っていなかった。まるで、医学生向けの解剖図のようだった。

一方でグッドニュースもあった。以前のスティーブの見立てとは逆に、ポルシェの純正アウターウィングは十分使用に耐え得ることが判明したのだ。あちこちに改善は必要だが。このアウターウィングはこの車の購入時から装着されており、1981年にレストアもしたこともあって愛着のある部分だ。フロントウイングはボルトオンなので簡単に外せるが、リアウィングはRS特有のものだ。当時の911のスタンダードなウィングよりも幅が広く、ホイールアーチの輪郭も異なっていた。

RSのリアホイールアーチのシーム(繋ぎ目)。

RSは、フロントよりもリアがワイドなホイールを装着した最初の公道走行可能なポルシェである。そして、限定生産用の新たなプレス加工に費用をかけることを避け、ベースグレードの911のパネルを円弧状に切り出した。それを新たにフレア形状にして溶接することで、ウィング幅の拡大を実現した。その結果、インナーの表面にシーム(繋ぎ目)がはっきり見える。

リアホイールを外してホイールアーチの内側を覗き込まないと見えないが、そこに生産時からの溶接部が確認でき、納得した。でも、スティーブはさらにボディパネルを外そうと考えているらしく、私は恐ろしくなった。

新しいインナーウィングが溶接された。

フロントに新たなインナーパネルを装着し、その隙間を埋めるように新しいノーズを取り付けると、RSはスクラップのようには見えなくなった。再び“車らしく”見えるようになったのだ。フロントウイングとボンネットを仮付けして、フィット感やアライメントを確認できたのも効果的だった。これは大きな前進だが、まだまだ先は長い。

再び911の形に戻った。


文:Delwyn Mallett まとめ:オクタン日本版編集部

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