ファーストクラスのさらに上を行く、ビジネスジェットの世界

Ryota SATO

“ビジネスジェット(プライベートジェット)”について、どのような印象をお持ちだろう? “費用がかかる”、“豪華な機内”といったイメージが強いが、詳しくはわからないという人が大半ではないだろうか。無理もない。日本で登録されているビジネスジェットは、2020年12月末時点でわずか59機(公用機・軍用機を除く)。2万機を超えるアメリカと比べるとあまりにも少なく、実際に搭乗した経験がある人もごく限られる。

今回、そんなビジネスジェットに搭乗し、取材する機会を得た。その様子をお伝えするとともに、私たちが利用しているエアラインとは何が違い、何が変わらないのか、その特徴を紹介したい。実態がよくわからない、ビジネスジェットの世界を知る一助になれば幸いだ。

ビジネスジェットの利用方法と最大の特徴


ビジネスジェットを利用する方法は、大きく分けて2通りある。ひとつはビジネスジェットを自家用機として保有し、利用する方法。もうひとつが、運航会社から事業用機をチャーターする方法だ。今回の取材は後者となり、朝日航洋(株)の所有するビジネスジェットに搭乗した。

ビジネスジェットを利用する際の制約は、驚くほど少ない。利用区間や利用日時は、法令や安全性が許す限り自由に設定できる。実はこの点が、一般のエアラインともっとも違う特徴だと言える。

想像してみてほしい。たとえファーストクラスでの旅を計画したとしても、目的地と出発時刻が決まっている便の中から選択する以外に方法はない。早朝に出発する便しかなかった場合、前泊の必要も出てくる。目的地への直行便がない場合は、乗り継ぎ便の予約も手配しなければならない。しかしビジネスジェットを利用した場合、自分の都合がよい時間に出発し、目的地に直行するプランを作ることができるのだ。いわば、オーダーメイドの旅といって良いだろう。

ちなみに最近増えているのは、離島へ直行するケースだそうだ。これまで上級シートで海外へ家族旅行をしていた人たちが、コロナ禍の影響で国内の離島に行くようになったとか。離島の滑走路は短く、大型機の直行便がないことが多い。そのような場合にこそ役立つのが、ビジネスジェットだ。

今回の取材で搭乗した朝日航洋のC680 サイテーション・ソブリン

上級マイル会員向けの特典を上回るサービス


ビジネスジェットを利用する際に、もう一点言及すべき特徴がある。それは、充実したサービスだ。その内容は、優先搭乗や専用のラウンジ利用といった、いわゆる最上級マイル会員向けの特典を大きく上回る。その一部を、空港到着から目的地に着くまでの流れに沿ってご紹介しよう。

・空港到着:柔軟なスケジュール変更への対応
渋滞や列車遅延のため、空港への到着時刻が遅れたという経験がある人は多いだろう。空港への移動中、搭乗手続きに間に合わないのではないかと焦る気持ちは、二度と味わいたくないものだ。しかしビジネスジェットを利用する場合、その心配は不要だ。なぜなら、出発時刻をあなたの予定に合わせてくれるからだ。あなたは空港への到着が遅れることを謝罪しつつ、到着見込み時刻を連絡すれば良い。

・搭乗手続き:待ち時間なく、短時間で終了する手続き
一般的に、国内線で出発予定時刻の1時間前、国際線の場合は2時間前には空港に到着することが求められている。搭乗手続きに、時間がかかることを考慮しているからだ。しかしビジネスジェットを利用する場合、その必要はない。多くの空港には専用のルートが用意されており、手荷物検査の列に並ぶ必要がないからだ。海外への渡航では、さらに強くその利点を感じるだろう。税関・出入国管理・検疫も、ごく短時間で待たずに済ませることができる。朝日航洋のビジネスジェットが拠点とする県営名古屋空港の場合、ビジネスジェット専用ターミナルがあり、隣接する朝日航洋のVIP専用ラウンジでくつろぐことも可能だ。



・機体への移動:専用車による送迎で機体の横まで移動
搭乗手続きが終わると、専用車で機体のすぐ横まで移動する。長いコンコースを歩く必要はない。空港についてから、ここまで一般のルートを使用していないことに注目してほしい。この最大のメリットは、時間の短縮だ。空港にもよるが、最短で空港到着から10分で機体まで移動できる。また新型コロナウイルスの流行以降は、他者との接触機会が限りなくゼロになる点も高く評価されているという。



・機内へ:ペットとともに搭乗することも可能

ペットの種類にもよるが、ケージに入れるなどの条件を満たせば、一緒に機内で過ごすことができる。ペットと一緒に旅をしたいと考える人からは、非常に高い評価を受けているそうだ。

・フライト:気に入った座席で、好みの食事を楽しむ
あなたはどの座席を使用してもかまわない。たとえば離陸時に右側の座席から都心のビル群を眺め、シートベルトサインが消えたあとに左側の座席に移り、景色を楽しむこともできる。周囲に気をつかう必要もない。仕事の打ち合わせをしても、小さな子供が騒いでも、迷惑をかける相手がいないのだ。その後、機内食を事前にオーダーしていた場合には、テーブルがセットされて食事とワインを楽しむこともできる。メニューから選ぶのではなく、自分好みのフルコースを楽しむことができるのだ。



・現地到着:迎えの車に乗り込み、目的地へ
到着後は、出発時と同じように迎車が機体の横までやってくる。預けたスーツケースは、機体の後部に収納されている。空港や条件にもよるが、荷物とともにそのまま目的地のホテルに向かって出発することも可能だ。

いかがだろう。ビジネスジェットを利用すると、ファーストクラスや最上級マイル会員への特典を上回るサービスを享受することが、おわかりいただけただろうか。

文:湯淺伸一郎

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