ファーストクラスのさらに上を行く、ビジネスジェットの世界

Ryota SATO

実際にビジネスジェットに搭乗してわかったこと


前置きが長くなったが、実際にビジネスジェットに搭乗して感じたことをお伝えしよう。飛行ルートは成田空港→県営名古屋空港で、機種はC680 サイテーション・ソブリン。航続距離は5,200Kmで近距離の海外への飛行も可能な、ビジネスジェットとしては少し大きめの8人乗りの機体だ。今回は取材のため、ビジネスジェット利用客専用の導線を利用せずにパイロットと共に移動する点と、機内食の提供がない点だけが通常と異なる。

当日の天候は雨で、時おり強い風が吹いている。数日前からの天気予報では関東で積雪の可能性が指摘され、荒れた天候となることが予測されていた。

成田空港の出発ロビーでパイロットと合流すると、さっそく関係者専用の通路を通って送迎車に乗り込む。車はいつも私たちが機体に乗り込む時に使うボーディング・ブリッジの下を通り、ビジネスジェット専用の駐機場へ向かった。大型機の近くを車で通った経験はないため、早くも非日常感に包まれる。

車は10分ほど走り、プライベートジェットの真横で止まった。ここまで、あの大きな成田空港内をほとんど歩いていない。そのため、疲労感はまったく感じない。

パイロットがてきぱきと出発前点検をする間、私たちは機体を外から眺めていた。思ったよりも小さく感じ、上空で揺れないのだろうかと少し心配になる。

出発前の点検が終わると、いよいよ搭乗だ。実際にビジネスジェットを利用する際には、こうした事前準備がすべて終わったタイミングで送迎車が到着する。車から数歩歩くだけで、機内に入ることができるのだ。

機内は、外観から想像したよりもはるかに広く感じた。内装はベージュを基調としていて、革と木目がふんだんに使われている。たしかに豪華だ。



私たちは、好きな座席を選んで座った。後方の6席は前向きで、最前列の2席は後方を向いて対面になっている。シートは大きく、左右に肘掛けもある。水平近くまでリクライニングさせることも可能で、シートピッチは新幹線のグリーン車ほど。これは快適だ。また、車のような3点式のシートベルトが備えられているのが、好印象だった。

ドアが閉まると、緊急時の説明があった。非常口や救命胴衣についての説明はエアラインのものと変わらず、安心感が高まる。エアラインと違ったのが、機内の説明だ。なにしろ設備が充実していて、乗り慣れた機体と配置も違う。みな興味津津に説明を聞いていた。

滑走路まで移動すると、いよいよ離陸だ。加速を始めてすぐに感じたのが、エンジン音の小ささだ。この機体は胴体の後方側面に、2つのジェットエンジンが搭載されている。大型機と比べて近くにエンジンがあるので、大きな音がするのではないかと思っていたが、違った。音量は、大型機の最前方座席で聞くのと同程度に感じた。音質も大型機と違い、とても軽やかだ。よくできた小排気量の車のエンジン音といったイメージだ。

離陸は、軽やかだった。大型機と比べると、あきらかに加速力がある。あくまでもイメージだが、滑走路の半分ほどで離陸したように感じた。

(カメラマンは着座し、許可を得て撮影しています)

機体はどんどん上昇し、雨を降らせていた雲に入った。大型機でも、雲を抜けるときに多少は揺れる。ビジネスジェットであれば、もっと揺れるのではと覚悟していたが、杞憂だった。ほとんど揺れることもなく、すぐに雲を抜けた。この機体はビジネスジェットの中では大きい方で、揺れも少ないそうだ。

上空でも揺れはなく、快適に過ごした。大きなテーブルを出してPCで作業をし、座席を移って違う景色を楽しむ。なにより、周囲に気をつかわなくていい。こんなに機内で話をしたのは、初めてだ。小さな子供やペットと一緒に利用する家族、会議をしながら移動するビジネス客の利用が多いというのも納得できる。ここは、自分たちだけの空間なのだ。



こうして非日常の時間を楽しんでいると、あっという間に県営名古屋空港に着陸した。成田から約60分。短い時間だったが、ビジネスジェットの利便性を十分に感じることができた旅だった。

文:湯淺伸一郎

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