60周年を祝う、クラシックランボルギーニの鈴鹿への旅|俺たちの「Road to Suzuka」

Octane Japan

ランボルギーニ創業60周年を記念した一大イベント「60th Anniversary Lamborghini Day」が鈴鹿サーキットで開催され、総勢251台の新旧ランボルギーニ車両によるパレードランがギネス記録を達成したことは既にお伝えしたとおりだ。全国からランボルギーニが集うにあたり、各地の正規ディーラーで「Bull Run」という名の鈴鹿サーキットへのツーリングが企画されるなど、会場までの道のりも含めて当日はお祝いムードに包まれた。

60周年を祝うため、ミウラ、エスパーダ、ジャルパ、カウンタック、ディアブロといったブランドのDNAを紡ぐ歴代モデルも約30台が鈴鹿サーキットへと来場した。そのうちの8割近くは自走での鈴鹿入りだった。

鈴鹿サーキットにはクラシックランボルギーニ約30台が集った。手前のミウラも自走で来場。

そもそもクラシックランボルギーニ部門では前述の「Bull Run」のようなオフィシャルなツーリング企画は予定されていなかった。だが、「せっかくだから皆で走っていこうよ」というオーナー有志(主にカウンタックミーティングのメンバー)の声がけにより、クラシックランボルギーニの自走組によるツーリング企画が自然発生的に生まれたのである。

クラシックランボルギーニのツーリングは60周年イベント前日に実施された。前泊して、60周年の前夜祭もしようという算段だ。ツーリングに参加する車両の大半は関東地方からの来場で、往復の移動距離は少なくとも800キロ、人によっては1000キロを超える。クラシックランボルギーニで1000キロを自走… 普通に考えると尻込みしてしまうが、カウンタックやディアブロのオーナー達にとっては車は乗ってナンボ。距離も勲章、自走上等、という人が多い。走行距離が伸びるのはむしろ愛車の調子がよい証拠だ、とは何とも頼もしいセリフだ。

長距離走行にあたってはさぞ念入りにメンテナンスをしたのではなかろうかと思いきや、オイル、冷却水、タイヤの空気圧チェック、バッテリーの点検程度と、現代車の走行前点検と変わらない内容の人が多く、ロングドライブ向けに特に入念なメンテナンスはしなかったようだ。特別な準備をあえて挙げるなら「気合の注入」「心と体の準備」「天気予報のチェック」ぐらいだったとか…

気合注入に加え、洗車もバッチリで準備万端だ。

このようなエピソードからも、カウンタックやディアブロたちはガレージにしまい込まれることなく、定期的にメンテナンスを受けて日常的に乗られていることが伺える。

ツーリング当日。東名高速道路のサービスエリアに集合したクラシックランボルギーニが鈴鹿へ向けてスタートした。途中のサービスエリアからも合流し、次第に台数が増えていく。「道中で合流するカウンタックの後ろ姿を見ると、所有している者でもワクワクする」というコメントもいただいた。きっと皆、同じ気持ちなのだろう。キーワードは「ワクワク」。所有していても尚、憧れの車であり続けるのは、本当にその車に愛情をもっている証拠だ。



限定50台のアヴェンタドール ミウラ オマージュ(右手前)もクラシックランボルギーニ仲間と共に走った。

途中で給油や休憩をしながらのツーリングは、あいにくの渋滞に巻き込まれ、目的地の鈴鹿サーキットまでは東京方面からは7時間30分ほどを要した。ある程度のスピード域で走行できれば長距離ドライブも苦ではないだろうが、道中の渋滞はさぞ辛かったに違いない。

SAのガソリンスタンドでこの光景を目にした人は驚いたことだろう。



しかし現地に着けば、クラシックランボルギーニ仲間との再会が待っている。カウンタックやディアブロは、20年以上所有し続けているオーナーが多く、皆、苦楽を共にした仲間だ。今回はランボルギーニ60周年のイベントだが、遡れば50周年や40周年記念イベントに参加するためイタリア本国まで一緒に行った仲間もいる。いわば筋金入りのランボルギーニファンなのである。

鈴鹿サーキットホテルに到着!

そんな仲間がひとたび集えば年齢も職業も年収も社会的地位も関係ない。愛車談義や昔話に花を咲かせ、再会のひとときを楽しむ前夜祭。20年以上も所有していれば、なかには還暦超えのメンバーもいるし、20年前には幼子だったメンバーのご子息もいまや立派な大学生になって親子で参加している。クラシックランボルギーニが好きだという共通項だけでこれほどまでの絆が生まれ、持続しているのは傍から見ていて羨ましいし、幸せなことだ。

ツーリングには参加せず、個別に自走で来場したオーナーもいる。中にはひとりで往復1200キロを走破した人もいる。道中の休憩時に初対面のムルシエラゴオーナーに声をかけられ、整備の相談を受けるといった交流が生まれたという。また、とあるディアブロのオーナーは、往路は奥様が終始運転して鈴鹿へ前々日入りし、ご夫婦でのドライブとイベントを満喫したそうだ。それぞれのオーナーと車のエピソードを聞くたびに、クラシックランボルギーニのある人生の豊かさと温かさを感じることができる。乗り手を選ぶ車たちではあるが、ひとたび結ばれたら唯一無二の人生の相棒になるのだろう。



明けて翌日の60周年記念イベント本番。前日のロングドライブと前夜祭で体力を消耗したのではないかという心配は無用。お察しの通り、皆タフなのだ。朝は早起きしてクラシックランボルギーニのパレードランを堪能し、午後はギネス記録に挑戦。251台が数珠つなぎになってのパレードランは超低速走行のいわば“約1時間の大渋滞”だったが、その間、重いクラッチを操り左足が攣りそうになっても、顔には満面の笑みがあふれていた。たとえそれが瘦せ我慢であっても、涼しい顔をして運転し、「旧車は大変ですねぇ」という周囲の声すら称賛として受け止めるポジティブさには恐れ入る。







スーパーカー世代の憧れの車は、実際に購入することができても、それを維持し続けることに多くの苦労が伴うのだと思う。それを支えるモチベーションは?と尋ねると、ずばり「仲間」だという声が多かった。夢が現実になり、20年以上が経っても見るたびに「カッコイイ」と思える車に出会えた幸せと、その価値観を共有できる仲間との出会い。純粋な少年の心を持ち続けるナイスミドルのバイタリティには脱帽するしかない。きっと10年後に行われるランボルギーニ70周年イベントでも、同じ仲間で集い、同じ時間を共有していることだろう。


文、写真:オクタン日本版編集部 写真提供:H. Ishiwata, T. Tsujii, S. Sugiura, K. Hanzawa

オクタン日本版編集部

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