人生を彩る香り、アンリ・ジャック

Henry Jacques

2023年4月、銀座の並木通りに『アンリ・ジャック 銀座』がグランドオープンした。「アート・オブ・リビング」の哲学のもと、フランスで半世紀近くにわたり数多くの香水を作り続けてきたメゾンの類まれなる魅力とは。



春の訪れとともに、空気も変化する。梅、水仙、沈丁花、羽衣ジャスミン、スズラン… 街を歩けば馥郁たる香りに心が踊り、気持ちも晴れやかになる。折しも新型コロナウイルス感染症対策が変更され、マスクの着用は個人の判断となったことにより、香りを存分に楽しめる機会が増えてきた。そんな2023年の4月に銀座・並木通りにオープンしたのが『アンリ・ジャック』である。

アンリ・ジャックは、フランスで半世紀近く前にアンリ・ジャック・クレモナ氏が創設した香水の専門メゾンで、長らくビスポークの香水のみを取り扱ってきた。香水のビスポークとは、その名の通り顧客の要望に合わせて何百種類もの中から選んだ原料を調合して世界にひとつだけの香水を作り上げるもの。顧客のライフスタイル、趣味、香水を使用するシチュエーションなど、さまざまな背景も汲み取ってオンリーワンの香りができあがる。

キャビネットやフローリングは、手染めされた古いオーク材を使用。伝統的なフランスのノウハウによって組み込まれたシェブロンパターンが、洗練された心地よい雰囲気を演出する。

銀座のブティックに足を踏み入れたときにまず驚くのはそのインテリアの上質さ。聞けば、多くのラグジュアリーホテルも手掛けたクリエイティブ・ディレクターのクリストフ・トレメノールが設計したもので、組み立てまでフランスでおこなったものを一度解体し、日本へ輸送。それを再度アンリ・ジャックの専門チームが日本で組み立て直したものだという。伝統的な重厚感とモダンなディスプレイが共存しているのが印象的だ。

アンリ氏の娘であるアナリズ -クレモナ氏が現在はアンリ・ジャックの代表を務めており、より多くの人々にフランスの伝統的な職人技“サヴォアフェール”を感じてもらうため、上記のビスポークに加え、代表的な50種類の香りが用意されている。洋服に例えるなら、オートクチュールに対してプレタポルテという位置付けだ。



世界で10店舗目となる銀座のアンリ・ジャックのブティックにはメインラインのLes Essences(レ・エッセンス)シリーズの19種類が美しく整然と並ぶ。その様子に、香りを試す前から心がときめく。香水それぞれの色が異なるのは、いずれも天然素材がもつ色合いによるものなのだとか。香料濃度は約100%で、加水されず凝縮されたレ・エッセンスは、ほんの一滴を手首につけるだけで十分だ。まわりに派手に香りをふりまくのではなく、自分の周囲だけで控えめにじんわりと香ってくれる。時間とともに香りが変化し、長時間にわたり包み込んでくれる感覚はとても贅沢で心地よい。


18~19世紀の貴重な木製のアンティークチェストをリメイクした1点ものの「アンティークチェストコレクション」。クリスタルボトルの香水を収めた繊細なボックスには、品質を保証するために証明書も付属する。「LABYRINTH」レ・エッセンス 15ml15 本セット 予定価格 815万1000 円(税込)

よりふんわりと香りを纏いたいならLes Brumes(レ・ブルーム)シリーズもお勧めだ。レ・エッセンスの処方をベースに約80~85%希釈したシリーズで、ノズルタイプをスプラッシュとスプレーの2種に付け替えることが可能。希釈しているとはいえ、濃度としてはパルファムに分類されるほど濃厚なので、噴霧したあともオードパルファムやオードトワレより長く香りが持続する。

レ・ブルームシリーズの中で興味をひく商品があった。テニスプレイヤーのラファエル・ナダル選手がオーダーメイドで作った2種の香りIn All Intimacy(イン オール インティマシィ)だ。「試合中につける香水」「テニスコートを離れたときにつける香水」の2種類を発売。実はアンリ・ジャックの代表であるアナリズ -クレモナ氏は、超高級時計ブランドを手掛けるリシャール・ミル氏の姪であり、その繋がりから、リシャール・ミル・ファミリーであるナダル選手もアンリ・ジャックの香水を愛用しているのだという。

ラファエル・ナダル選手とのコラボレーションにより誕生したIn AllIntimacy。香りによってオンオフを切り替えるというコンセプトが、いかにもプロフェッショナルのアスリートらしい。RAFAEL NADAL N°1(ラファエル・ナダルN°1)レ・ブルーム フローラル/フレッシュ 75ml 価格:15万700円(税込)、RAFAEL NADAL N°2(ラファエル・ナダル N °2)レ・ブルーム シトラス/フローラル 75ml 価格:15万700円(税込)。

ビスポークには無限の組合せがあり、日本からでもオーダーをすることができる。専属スタッフの徹底したコンサルティングにより、顧客の要望を伺い、フランスの調香師によってサンプルの香りが南仏の自社のラボラトリーで作られる。その後、3種類のサンプルが顧客のもとに届くのだが、なんとこの時点でほぼ理想の香りが完成していることが多いのだという。幾度もやり取りを重ねずとも理想を形にできるとは、アンリ・ジャックのコンサルティングと調香師の技量がいかに優れているかの証である。

アンリ・ジャックの香水は世界各地から集められた貴重かつ高級な天然素材を使用し、グラースのアトリエで、伝統的な製法によって調香師達がひとつひとつ大切に手作業で作っている。

ビスポークのオーダーにも、人それぞれのストーリーがあるという。たとえば「おばあちゃまがつけていた香水を再現したい」という孫からの依頼。今は亡き祖母が愛用していた香り。香水の名前は覚えていないが、香りは記憶に残っている。その記憶を引き出し、再現し、懐かしい祖母の香りで包みこむことができるとは、なんと心あたたまるエピソードであろうか。

他にも、結婚式の引き出物にするために特別なオリジナルの香水をビスポークで誂えた花嫁もいるとか。人生を彩る、唯一無二の贈り物になったことだろう。香水は自己表現のツールでもあり、思い出を蘇らせる心の泉でもあり、生活を豊かにする相棒でもある。マスク着用の義務がなくなった今、深呼吸をして心の底から香りを楽しもうではないか。

アンリ・ジャックのすべてのボトルはハンドメイドで仕上げられているが、その粋を極めたのがこの美しいクリスタルのボトルコレクション。アール・ヌーヴォー期のガラス工芸を彷彿させる。「RUBYROSE」タンドレスドゥアンリ・ジャック 70ml 36万1900円(税込み)数量限定


アンリ・ジャック 銀座

住所:104-0061 東京都中央区銀座7-6-19
電話:03-3289-0068
営業時間:11時~19時 定休日:火曜


文:オクタン日本版編集部 写真:アンリ・ジャック
Words:Octane Japan Photography:Henry Jacques

オクタン日本版編集部

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