給電システムを初導入!メルセデス・ベンツからEQE SUVが登場

Tomohiro AOYAMA

メルセデス・ベンツは2023年8月25日、ラグジュアリーSUVのBEV(電気自動車)「EQE SUV」を発表。同日から受注をスタートさせた。最初は2グレードのローンチエディションのみの販売となり、価格は1369万7000円から。上級グレードのメルセデスAMG EQE 53 4マチック+ SUVが23年10月より、スタンダードなEQE 350 4マチック SUVが即日デリバリー開始となる。

どのプレミアムブランドよりも先駆けて積極的にBEVを投入しているメルセデス・ベンツから、早くも7番目のBEVが登場した。EQE SUVは、その名の通りEQEのSUV版ともいえるモデルで、シャシーにはEQEやEQSと同じBEV専用のプラットフォームが用いられている。デザインの似ているEQS SUVとはホイールベースが180mm、全長が250mmそれぞれ短く、車両重量も250kg軽い。全長5m未満に収まったひと回り小さなボディは、日本国内での取り回しも良さそうな大きさだ。



エクステリアは今までのICE搭載SUVとは全く違う、EQシリーズ特有のシームレスなデザインが特徴的。ロングホイールベース&ショートオーバーハング、そして短めなフロントフードなど、フラッグシップのEQS SUVと共通のフォルムも見られる。滑らかな面で構成されたボディのCd値は、SUVモデルとしては驚異的とも感じる0.25。空気抵抗の少なさが電費のよさに直結するBEVならではの、メルセデス的回答といえるだろう。



ついに給電システムを初導入


その優れたエアロダイナミクス性能ももちろん大きく貢献しているが、BEVではどうしても気になる航続距離が満足できるレベルに達していることもEQE SUVの特徴だ。WLTCモードでの一充電走行距離は528km。このスペックをマークするには、89kWhの大容量リチウムイオンバッテリーを搭載している点が大きなウエイトを占めてはいるものの、フロントの駆動のみを適宜カットする「ディスコネクトユニット」の初採用や、ヒートポンプユニットの搭載などの最新技術も影響している。システム総出力215kW/765Nmを発生するパワフルな4WDであることや、2.6トン越えの重量級ボディを考慮すれば優秀な数値だ。

内装のデザインや機能は、フラッグシップのEQS SUVに採用されているものがほぼ踏襲されている。ダッシュボード全面を1枚のガラススクリーンが覆う、MBUXハイパースクリーンもAMGモデルに標準装着。3枚の超大型ディスプレイが展開される世界一先進的なインテリアは健在だ。ほかにも、連続可変ダンピングシステムとエアサスを組み合わせたサスペンションや、最大10度可動するリア・アクスルステアリング、オフロードモードも備わったダイナミックセレクトなど、EQS SUVに搭載されている数々の機能がほぼすべて採用されている。



また、今回EQE SUVから始まった機能として、V2H/V2Lの給電システムがあげられる。これは世界に先駆けて日本へ導入された装備であり、メルセデスとしては初採用。日本の顧客から多くの要望があったため導入されたという。確かに、非常時の電源として使用できる給電システムは、災害大国の日本において重要度を増しているのは明らか。輸入車ブランドはどこもその点を重要視していなかったが、メルセデスはユーザーのニーズに柔軟に応えた形だ。



EQS SUVとの棲み分け


しかし、ここまでデザインや機能、装備が似通ってくると、約200万円の価格差以外にEQS SUVとの違いは何があるのだろうと思ってしまうところ。ここで、両者の違いにも改めて簡単に触れておこう。まず大きな違いは、ボディの長さと乗車定員の差だ。EQS SUVは全長5130mmと、軽く5mを超えてくる堂々とした体躯が前提にあり、シートも3列の7人仕様となる。ラゲッジスペースの最大容量も、EQE SUVの1675リットルに対しEQS SUVは2020リットルとかなり大きい。車庫のサイズが許すのであれば、使い勝手の満足度はEQS SUVのほうが確実によいだろう。



あとは、現時点でAMG仕様をラインナップしているのはEQE SUVだけという点も異なる。その代わり、EQS SUVにはショーファーパッケージが用意されていて、リアシートの快適性を向上させることができる。フラッグシップモデルらしいラグジュアリー感が得られるEQS SUVに対し、スポーティなグレードも選べるEQE SUVと、しっかり区分けされているのだ。





この辺りの車種の棲み分けがしっかりとされている点も、メルセデスらしい配慮。日本でいま一番BEVの車種数が多く販売されているブランドであり、全世界でのBEV販売も前年比123%増(第2四半期販売台数)と好調に推移している、メルセデスならではのラインナップ戦略といえるだろう。

今後もラインナップを拡大していき、2030年には100%BEV化を目指しているメルセデス。EQE SUVで今回7車種目となったBEVは、今後もますます増えていくのだろう。カーボンニュートラルに向けたメルセデスの今後の取り組みも含め、そのひとつひとつの動向に注目していきたい。




文・写真:青山朋弘 Words and Photography: Tomohiro AOYAMA

青山朋弘

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