100年近く前の車2台と過ごす日常|『Octane』UKスタッフの愛車日記

RETRO-SPEED.CO.UK

『Octane』UKスタッフによる愛車レポート。今回は、マーク・ディクソンが1927年フォード・モデルTと1929年フレイザー・ナッシュについてレポートする。どちらも1927年から29年にかけて製造された同じ時代の車だが、彼がそれぞれの車で体験したことはまったく異なっていた。



まずモデルTは、点火タイミングに問題があった。なので、信頼できるレベルまで修復する必要があった。ちょうどその頃、ハガティがビスター・ヘリテージに新しいクラブハウスのオープンする際に『Octane』を招待してくれた。これは絶好のチャンスだった。というのも、私のモデルTの整備は、そこから数マイルしかないT Service社のリチャード・リマーに任せていたからだ。

このモデルTは、往復ともに完璧に走りきった。実際、GPSで計測すると途中では45mphも出ていた。その後リチャードにメッセージを送ると、彼は疑うように眉をひそめた。ハガティのクラブハウスも印象的だった。写真撮影のため、モデルTは中に停めさせてもらうことになった。1階には、広々とした車の展示スペース、ラウンジやバーがある。そして2階にはワークスペースがあり、ハガティの本社としてだけでなく、イベントや講演会も開催できる。



その数日前、私はもっと熱狂的な活動に打ち込んでいた。初めて本格的にレース参戦をすることになったのだ。サイモン・ブレイクニー=エドワーズが所有するフレイザー・ナッシュは、数週間前に返却していたが、この車を私にずっと気前よく貸してくれていた彼は、「オウルトン・パーク・ゴールド・カップ」の2人乗りVSCCレースに、私がこの車で申し込むことを熱望していたのだった。

チェシャー・サーキットを走るのは初めてだったので、前日の金曜日に行われた20分間の練習走行は、非常にありがたかった。フル装備の1980年代のツーリングカーでロータス・コルティナMk1数台や、“ゴジラ”とも言うべき日産GT-Rなどのグループに混じって走った。実際には、目の前のコーナーよりもミラーを見ている時間のほうが長かったが、そういったことも含めて間違いなく有益な時間だった。

土曜日の予選は、また違った意味で刺激的だった。予選スタート後2周目に、ナッシュのクラッチのレリーズベアリングが破裂した。そうして突然、私はレースのスピードで走行しながら、ノークラッチでのギアチェンジを学ぶ羽目になった。ベテランレーサーで気さくなアイルランド人のデビッド・ワイリーとペアを組み、彼とサイモンと私の3人でこの車を半分ほど分解して、問題のベアリングを交換した。しかし、次にデビッドが走り出したそのとき、同じことがまた起きてしまった…。





私たちはすぐに、ベアリングが中心を越えて押され、クラッチのスプリングを突き抜けていることに気づいた。そこで、ペダルに繋がれた廃材のケーブルをつなぎ、クラッチストッパーを作った。大ざっぱな対応だったが、なんとかなった。しかし、どういうわけか圧力計につながる給油パイプが壊れてしまったようで、オイルが漏れだした。それも何とか直すことはできたのだが、15分間の私のレース時間には間に合わなかった。

そうしたらデビッドが、なんともありがたいことに、次のレースの彼のポジションを私に譲ると言い出した。そういうわけで、私は初めてのレースに参加することになった。土砂降りの雨の中、ロッドブレーキとオートバイのサイズのタイヤを装着した車を、110mphで走らせた。そしてそれは私にとって、信じられないほど素晴らしい出来事となったのだ。


文:Mark Dixon

Mark Dixon

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