栄光のマシン、WRC97の究極のレストモッド!? プロドライブ P25に試乗

Octane UK

1990年代の日本製パフォーマンスカーが、同じ時代のホットなBMWやメルセデス、ポルシェと並んでマストアイテムとなっていることは、モダンクラシックの様相の変化を物語っているといえよう。コレクターがこぞって求める極東のエキゾチックカーの中でも、特にスバル・インプレッサ22Bは誇り高き存在だ。90年代の世界ラリー選手権で起きたドラマを、バンベリーで生まれたブルーとゴールドのインプレッサほど如実に体現しているものは他にない。

イギリスのレーシングコンストラクターであるプロドライブとスバルの15年にわたる協力関係は、モータースポーツ界で最も成功した不朽のパートナーシップのひとつである。WRCで46勝を挙げ、1995年から1997年にかけてWRCタイトルのハットトリックを達成、さらに95年、01年、03年にはWRCドライバーズタイトルの3冠を達成し、コリン・マクレーやリチャード・バーンズの名を世に知らしめた。

1998年に発売された22Bは、このアイコニックなパートナーシップを究極的に表現したストリートカーだった。その発売から25周年となる2023年、特別なオマージュモデルとしてこのプロドライブ P25が発売されたのである。P25はデビッド・ラップワース(スバルのWRCでの成功の立役者)が監督し、ピーター・スティーブがスタイリングを担当した。

ピーター・スティーブはインプレッサ WRC97のデザインを担当しており、当時WRCでの勝利に携わった技術者たちによって製作されたこのP25は、究極のレストモッドであるといえるだろう。

オリジナルのモノコックが剥き出しにされるところから、このフルレストア作業は始まる。ドア以外のすべてのパネルはカーボンファイバーで作り直され、22Bのワイドボディの外観が再現される。インテリアは、美しいカーボンファイバーとアルカンターラの張りのあるシートで完全かつ丁寧にレストアされ、エアコンとインフォテインメント・システムが装備される。

しかしこれらはすべて、P25のドライビング・エクスペリエンスを生み出すスパルタンなハードウェアが纏う“ドレッシング”に過ぎない。P25は、洗練されすぎた車になったわけではない。いわばプロドライブWRCインプレッサのフルモデルチェンジとも表現することができ、あらゆる道をターマックのラリーステージに変えてしまうだろう。残念ながら、ドライバーをバーンズやマクレーに変身させることはできないが。



エンジンはもちろん「EJ25」。2.5リッター・フラット4で、プロドライブがより強力で軽量になるようにリビルトした。それにより450馬力最大トルク600Nmというパワー、花火のようなサウンド、そして爆発的なフィーリングを手に入れた。



もちろん全輪駆動で、ラリーカーのようにアクティブセンターデフを備える。トランスミッションは競技用に開発されたシーケンシャルドッグミッションで、ヘリカルギアを使用することで、ギアチェンジに要する時間はわずか0.08秒を実現し、洗練性をもたらしている。なお、シフトチェンジは、大きな三日月型のパドルシフトで操作する。また、3秒以内に時速60マイルまで加速するフル・ローンチ・コントロールを備えている。



足下には、プロドライブ仕様のビルシュタイン製ダンパー、巨大なノンアシスト・ノンABS APレーシング・ブレーキ、プロドライブデザインの19インチ軽量アロイ・ホイール(ゴールドではなくシルバーグレー)に235/35ブリヂストン・タイヤが装着されている。



P25のインパクトには目を見張るものがある。昨今発売されたどんな車も、迫力、真正性、雰囲気においてこの車に及ばないだろう。また、車高の低いスーパーカーで走ればたちまち車が損傷するような凸凹の激しい道では、最強のホットハッチですらも凌駕する速さをもつ。要所要所で、P25は完全に“ミサイル”だと言えよう。

もしあなたがWRCの黄金時代を知っているのであれば、これほど魅力的な車はないだろう。しかし現実は厳しい。P25の価格は46万ポンド(約8,850万円)。さらに、たとえ宝くじが当たっても、生産される25台の枠はすべて埋まってしまっているので、新車で手に入れることはできない。

P25を手に入れた時点ですでに「勝者」なのだ。


文:Richard Meaden

Richard Meaden

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