手に届くアストンマーティン!? なぜか市場評価と質の高さが反比例するベストバリューな車種とは

アストンマーティンDB6サルーン



走行距離2万4000kmのDB6を味わう
"状態のよいDB6を入手して早朝の人気のない道を飛ばす"というのは簡単ではない。DB5より安価だといえ、40万ポンド以上の価値がある車だ。オーナーは大切に保管しておきたい。だが、オクタンとしては、最高の車でテストを行いたいと考え、ケンジントンにあるヘキサゴン・クラシックスから、シャシーナンバーB6/2987/Rを借用した。そのコンディションはパーフェクトで、重要なことに非常にオリジナルの状態に近い車だった。新車から二人のオーナーによって大切に扱われ、走行距離はわずか1万4900マイル(約2万4000km)に過ぎないのだ。それをアストン・スペシャリスト、パグスリー&ルイスがレストアした。こうした機会は滅多にあるものではない。

B6/2987/Rは、1967年5月12日にイギリスの高級車ディーラーであるH.R.オーウェンに販売され、ジャージーに住む二人目のオーナーが41年間にわたって所有し続けた。総走行距離が短いのは、ジャージーがさほど広くないためだろう。

初代オーナーは、ZF製5段トランスミッション、熱線入りリアウィンドウ、3本耳のスピンナー付きクロームワイヤーホイール、そしてパワーステアリングを装備させた。すべてのツールと、組付け指示書、保証カード、サービスブックなどのあらゆるドキュメントが揃っている。

夏の早朝、空は晴れ渡り、ロンドンはまだ眠っていた。私はロンドンの高級住宅街にあるガレージのドアを静かに開け、メインスイッチを入れ、チョークレバーを調節し、小さなイグニッションキーを差し込む。チョークを引くと3995cc6気筒エンジンは目覚め、軽やかにアイドリングを始める。3連のSUキャブレターも綺麗に同調している。唸りを上げて発進し、セントラルロンドンの人気のない道路を突き進む。ヒストリックカーは夏の早朝が大好きだ。そしてもちろん私も。

DB6は素直で静かだ。クラッチは軽く、ステアリングは滑らかに動く。ギアボックスは他のエンジンコンポーネントに比べると目覚めは遅く、オイルが暖まるまではリバースギアと1速ギアは扱いづらく、慎重なタッチが必要だ。オリジナルのブラック・コノリーレザーで張られた内装は心地よく香り、シートは快適だ。ブラックの塗装とレザーで覆われたダッシュボードには、クラシカルなスミスのメーターが並び、その外観は実に美しい。

ワッツリンクとトレーリングアームが効率よく配置されているため、舗装状態の悪いロンドンの道路もしなやかに走り、轍の上でもリアのリジッドアクスルは確実に路面を捉える。調整式のリアダンパーは一番ソフトな設定のままにして走り始めた。DB6が暖まると、がたつきや軋みのないボディワークの安定性を感じるようになる。スーパーレッジェラ工法をベースとしながら、DB6では鋼板プラットフォームがリア部分でさらに強化されており、非常によく仕上げられている。

ウォームアップが終わり、その正確さと操作のしやすさに自信を得た私は、速度を上げてみることにした。D6は正確にスピーディに街を抜けていく。当然ながら油圧式のパワーステアリングの感触は実によい。その感触は、最近の電動パワーステアリングなど比較にならないほど優れている。ガーリング製のサーボ付きブレーキはパワフルで、6.70H15サイズのエイヴォン・ターボスピードタイヤが抜群のグリップを発揮する。

高速道路に乗るとギアリングが完璧だと思えてくる。この時代の車の多くは、特にジャガーなど4 段ギアボックスだが、DB6の5段は完璧でグランドツーリングが楽だ。エンジンはアストンならではの唸りを上げるが、フレッシュエア・ベンチレーターを備えたキャビンは涼しくて静かだ。ギアボックスの2段以上のステップアップレシオは的確で、オイルの温度が上がるにつれて、さらに素晴らしいパフォーマンスを発揮する。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.)Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.)Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.)  Words:Robert Coucher Photography: Paul Harmer

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