パワフルな一撃!1000万円越えのMGBとは?

Photography:Tim Andrews



このスピード域はノーマルのままでは死を招くことになりかねないが、サスペンションとブレーキはそれに充分対応するように強化してある。フロントライン社はスプリジェットとBのサスペンションをアップグレードする経験が長く、その仕事ぶりは以前から信頼されていた。私自身のヒーレー"フロッグアイ"もフロントライン社によって改良されたフロントサスペンションを装着している。

アビンドンには、まったく新しい軽合金製のアップライト、鋼管製のウィッシュボーンとコイルダンパーユニットを使ったサスペンションを備えるが、それはオリジナルのレバーアーム式ダンパーと比べてより高性能で、まったく妥協がない。リアサスペンションはさらに巧妙に改良されている。オリジナルのリーフスプリングを取り去ってコイルダンパーユニットに交換し、6本のリンクによってリジッドアクスルを支持させている。

これらの改良によって、スタート時にアクスルトランプを起こし、路面が荒れたコーナーで飛び跳ねる傾向を抑え込んでいる。乗り慣れた私自身のBGTと比べると、アビンドンでコーナーを加速して抜けるとき、リアが沈み込まないことが奇妙に感じられる。代わりにアビンドンはフラットな状態を維持して、落ち着いた走りを見せる。ハードにスロットルペダルを踏み込んだ時だけトラクションが失われ、すっと戻るという感覚に胸が躍る。私は運転の天才じゃないかと誤解させるが、実はマシンのセットアップが優れているからなのだ。



ブレーキの性能も実に素晴らしい。前・後輪に最適なサイズのディスクローターに最新の軽合金キャリパーを組み合わせている。車重はわずか897㎏なのだからブレーキ性能にゆとりがあるのは不思議ではない。急激にブレーキを踏み込むと、ペダルにわずかながら「効くのか効かないのか」といった感覚があったことをフロントライン社は把握しており、異なるマスターシリンダーを用いて改良を図った。

このテストドライブで一番感じたのは、アビンドンが構造的にもパッケージとしても完璧だということだ。こういった改造車ではすべてがマッチしている感覚を覚えることは希だ。ボディの剛性も申し分ない。Bのボディ剛性は、3個のセクションから成るシルと深いトランスミッショントンネルで確保されているが、フロントライン社はそれに加え、ブリティッシュモーターヘリテージ社が製作する電着塗装を施したボディシェルに、さまざまな独自の改良を依頼した。重量配分を考慮して、よりよいエンジンの配置を実現するためにバルクヘッドをリア方向へ移動させ、新しいサスペンションマウント(フロントライン社の改良型サスペンションはボルトオンキットとしても購入可能)と、シーム溶接を採用し、主要パーツの強化を図っている。

フロントライン社はそのボディに数々の防音策を加え、続いてBに相応しい内装を施す。スタンダードな仕様から数段上をいくこのトリムは、レザーまたはアルカンターラを全体に用い、最近拡張された自社工場内で丁寧に仕上げられる。パワーウィンドウ、集中ドアロック、キセノンヘッドライト、ハイスペックのステレオは標準装備だ。さらにエアコンやシートヒーター、フロントスクリーンヒーター、ナビゲーションなどがオプションとして用意されている。

外観は、ほぼスタンダードに保っている(美しいダンロップアロイホイールは別として)が、フードは高品質なオリジナルバージョンから写真に写っているスピードスタータイプまで、3種類から選ぶことができる。

さて、MGBに8万ポンドの価値はあるのか。もちろん素直には頷けないかもしれないが、なぜこれほどまで高値になるのかは明らかである。もし使い勝手がよく、速く、そして信頼性の高い車を探しているのであれば、これは実に素晴らしい選択肢だ。つい最近、あるひとりの顧客がアビンドンを手に入れるため、新しい911を下取りにだしたと聞いた……。


フロントライン社 MGBアビンドン・ロードスター
エンジン:2488cc、4気筒、DOHC、16バルブ、削り出しクランクシャフトおよびコネクティングロッド、
50mmスロットルボディ(シリンダーヘッドに直接マウント)、 Omex制御システム
最高出力:304bhp/6800rpm 最大トルク:33.3kgm/5200rpm 
変速機:6速マニュアル、後輪駆動、LSD ステアリング:EPASラック・ピニオン
サスペンション(前):アロイ製アップライト、チューブラー・ウィッシュボーン、コイルダンパーユニット
サスペンション(後):リジッドアクスル、6リンク、コイルダンパーユニット
ブレーキ(前):ベンチレーテッドディスク、4ピストンキャリパー ブレーキ(後):ソリッドディスク、2ピストンキャリパー
車重:897kg  性能:最高速度 160mph(約258km/h)、0-100km/h 3.8秒

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO (Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:渡辺 千香子(CK Transcreations Ltd.) Translation:Chikako WATANABE (CK Transcreations Ltd.) Words:David Lillywhite 

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