フェラーリV12エンジンを積んだ1950年代風GTカーとは?

Photography: Martyn Goddard

簡単にいってしまえば、この車は伝統のフェラーリ・エンジンと独特のスタイル、そして現代的な使いやすさを兼ね備えた1950年代風のGTだ。それだけではよく分からないという人のために、もう少し詳しく説明したい。

オークランドの港近くの踏切で大きく跳ねた車は、濃いブルーのフロントエンジンクーペである。1950年代のマセラティを思わせるスラリとしたエレガントな車が埠頭に向かって加速すると、フェラーリ250GTOと同じスペックのV12エンジンの咆哮がインターステーツ80 号線の橋脚にこだました。あっという間に過ぎ去るそれらは、まるでイタリアのローマ街道に点在する小さな村々のようにも見えた。

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この車の名は"ガット"という。カリフォルニア州オークランドにあるスティーブ・モールの高名なホットロッド・ショップが、モデナのカロッツェリアの過去の傑作に敬意を払いながら作り出した完全オーダーメイドのスペシャルである。それは何かの"レプリカ" ではなく、情熱を注ぐものには出し惜しみをしないエンスージアストが発案した21世紀の新しいジャンルの車である。懐かしいスタイルとともに現代的な快適性を持つ車は、1960年代の名車では埋められない"隙間" を塞いでくれるはずである。



この稀有なクーペがオーナーに引き渡される直前の最終チェック、いわゆるシェイクダウンテストに同行しないかという誘いを受けた私は、念のため前泊したモーテルを早めに出発したが、韓国食品店や板金工場が並ぶイースト12ストリート地区はまるで迷路のよう。ウロウロと迷いながらも何とかたどり着いた先が、看板も掲げていないモール・コーチビルダーズの工場だった。

カメラバッグを引きずりながら工場内に歩み入った私は、競走馬のように前だけを見るよう心掛けた。というのも、次々に現れる作業ベイでは、黒いTシャツを着てベースボールキャップをかぶった男たちが、素晴らしいアメリカン・カスタムカーに黙々と取り組んでおり、そちらにフラフラと吸い寄せられてしまいそうだったからだ。

一番奥のスペースでは見事なGTカーが、そ新車の"50s"GTの由緒正しいエンジンを暖機していた。パトリック・オーティスが組み上げた3リッターV12エンジンは300bhpの最高出力を発生するという。スティーブの息子のマイケルが、ゲットーのような地区へ迷い込まずに工場までよくたどり着いたものだと褒めてくれた後、手早く車について説明してくれた。時には強烈過ぎるカリフォルニアの陽光はありがたいことに雲に遮られており、ディテールを撮影するには理想的なコンディションだった。しかもその車は魅力的なディテールに文字通りあふれていた。

編集翻訳:高平 高輝  Transcreation:Koki TAKAHIRA Words: Martyn Goddard

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