CMCのバードケージ1/18(Photograpy:Kumataro ITAYA)



以下、写真について簡単に。

□ CMCのバードケージ1/18
一見、何の変哲もない1/18モデル。デジタル化の恩恵なのか、最近のモデルらしくカタチは実にしっかりしている。CMCの場合ボディに覆われて見えない部分に真髄がある。




□ CMCのバードケージ・ギミック開
CMCのバードケージ、フロントとリアを開いたところ。もちろんドアも可動。CMCの凄さは細部にある。たとえばフロントフッドの両脇にあるロック部分は、実車同様に機能する。リアのロックも同じ。ロック部分が確認できるよう裏返して撮影した。他の見所としてハーネス(電線)がある。フロントライトのハーネスなど、細かな配線が再現されている。設計プロセスは合理化されても、組立は労働集約的作業の賜物。歯科医やファッションデザイナーはAIで置換可能だが、歯科技工士や縫製作業者の機械化は遅れる、という未来予測がある。モデルカー製作の現場は、既にこの未来予測で示された状況に近いように感じる。




□ CMCのバードケージ・エンジン
CMCによるバードケージの1/18エンジンモデル。細部まで再現したモデルカーをつくったなら、個々の部位も販売する、というのは実に賢いビジネスモデルだと思う。




□ CMCのバードケージ・シャシ
CMCはシャシ状態のバードケージを商品化したくて、数ある候補車種のなかからバードケージを選んだのかもしれない。1/18で再現されたバードケージのシャシ。これが世に出た時は打ちのめされた気がした。こちらは限定モデルで、限定数は3000である。




□ CMCのバードケージ・フレーム
シャシ状態の商品化には半ば呆れたが、CMCは更にバードケージの1/18フレームも発売。好事家ウケする部位は限定モデルにしているのが憎い。こちらの現定数は2000。




□ CMCのバードケージ・ステアリング
CMCのモデルは、細かく見て行くと驚かされる点が満載である。その一例としてステアリングを。実車同様に金属の芯に木材を貼り合わせてつくられている。この他にもフィラーキャップなどはほとんどが可動で、撮影はしなかったが、ホイールも実車を忠実に再現している。




□ CMCによるバードケージの解体新書
こうして並べると、解体新書の語が浮かぶ。本文にもあるように、CMCでは、こうした商品構成を、マセラティ・300S、アルファロメオ・8C 2900 B、そしてランチア・D50などで展開している。




□ ミニチャンプスのバードケージ1/12
ドイツのミニカーメーカー、ミニチャンプスによる1/12のバードケージ。サイズはCMCより大きいものの、細部のつくりはCMCに劣る。1/12でも、バードケージならばCMCと同じ1960年のニュルブルクリンク仕様が欲しかったのだが、逡巡しているうちに逃してしまった。




□ ミニチャンプスのバードケージ・ギミック開
「CMCのバードケージ・ギミック開」のCMCに合わせてフロントとリアを開いた。リアフッドのロックは、CMCと異なり機能しないダミーである。その他も、細かく較べるとミニチャンプス製にCMCほどの執念は感じられない。ただし1/12という大きなサイズに因る迫力は満点。




□ ハイテクモデルのバードケージ1/87
ドイツのハイテクモデルによる1/87のバードケージ。発売と同時に購入したのだが、あまり売れ行きが芳しくなかったのか、その後、ケージ部分だけのミニチュアがおまけとしてついてくる時期があった。残念ながらケージだけの販売はなく、あくまでおまけという位置付け。発売時に飛びつけば、しばらくするとおまけが付属するようになり、少し待てば待ったで売り切れになってしまう。モデルカーを買う、というのも、なかなか難しい。




□ ハイテクモデルの箱書
1/87という小さなサイズで精密なモデルをつくるとなると、やはり熟練した人の手に頼らざるを得ない。ハイテクモデルには一台一台、制作者の署名が添えられている。




□ 3台のバードケージ
1/12、1/18、そして1/87を並べるとこのようになる。サイズ比較の為のメートル原器として、AMRによるキットをプロのモデラーが組み上げた1/43のバードケージを並べようと探したのだが、取材の為に長期貸し出し中だったことを忘れていた。仕方なく、大きさを知る手だては500円玉で代用している。




□ AMR×北澤志朗氏
AMR(アンドレ・マリー・ルフ)のキットをプロモデラーの北澤志朗さんが仕上げたバードケージ。前項に書いた事情から現在は手許にないので自分用に撮影していた写真を。原型がデジタル設計されるようになって、アンドレ・マリー・ルフのような伝説的原型師の活躍領域が狭まった気がする。それでも、工芸品とも呼べるようなバードケージには強く魅かれる。付属する展示ケース、その内側に一分の隙もなく収納された木箱。1/43のバードケージはこの木箱に収まっている。その外側にある展示ケースも箱だと考えると、これは貴重な茶器などにみられる二重箱である。アルミ削り出しの小さな円筒は、モデル陳列時に使用する「ウマ」。AMRのモデルは金属製なので重い。長期の陳列でもタイヤやサスペンションなどが劣化しないよう用意されたもの。このバードケージが、たとえミニチャンプス製の1/12などよりも高価だとしても、わたしは充分納得できる。




□ 今回の蛇足 バードケージのフレーム図面
昨今では、以前なら考えられないようなものまで入手できるようになった。写真は1998年に刊行された「Archivo Maserati」という資料集に収められているバードケージのフレーム図面の写しである。

文、写真:板谷熊太郎 Words & Photograpy:Kumataro ITAYA

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