最高にスーパーカーらしいスーパーカーを駆る!│紫衣の魔法を味わう 後編

Photography: Dean Smith



最高出力は375bhp/8000rpmで、そこからちょうどレッドゾーンが始まっている。一方、最大トルクは36.8kgmながらそこに達するのはやや遅く5500rpmである。これは主に82mmのボアに対して62mmという短いストロークを与えた、つまりはオーバースクエア(ショートストローク)エンジンとしたことによるものだ。
 
そもそもこのエンジンを最初に設計したジオット・ビッザリーニはレースカー用を想定していた。フエルッチョ・ランボルギーニがもう少しロードカー用にリセットするよう指示したとはいうものの、レースを目指したビッザリーニの名残がこの高回転型V12にはあるというわけだ。踏めるチャンスがあれば踏むというのが私の流儀であり、高回転を駆使して駆け上がる。
 
燃料コーションが灯った。近くのスタンドに滑り込む。ひと息つくとしよう。初期型のカウンタックには左右両方のNACAダクト奥に給油口がある。スタンドの店員が50ユーロ分のオクタン価100ガソリンを右側の給油口から入れている間、足回りをチェックしてみることにした。タイヤはミシュランXWX で、フロント205/70VR14、リア215/70VR14を履いていた。特に真後ろから見たときのリアタイヤの小ささと言ったら⋯。345/35ZR15のピレリP7を履いた後のカウンタックと比べたなら、まるでスペースセイバータイプのスペアタイヤを履いているかのようだ!
 
本当はこうなるはずではなかったという。1974 年のカウンタックデビューまでに開発中のP7タイヤを間に合わせるとピレリはボブ・ウォレスに約束していた。けれども開発は遅れた。ボブはP7を待つべきだと進言したようだが、フエルッチョは当座の現金を何より必要としていた。こうしてナローボディのカウンタックLP400 が誕生することになったのだ。
 


ちなみにようやくピレリがP7を届けたとき、サンタガータにはもうパオロ・スタンツァーニもボブ・ウォレスもいなかった。こうしてカウンタックにP7を履かせるというアイデアはウォルター・ウルフとジャンパオロ・ダラーラのコンビへと託されることとなる。
 
燃料を補給したのち、我々はサンマリノをあとにして、さらに刺激的な道を求めサンレノという美しい街を目指す。雪解けあとの1月だったこともあって紫衣のカウンタックはかなり薄汚れていたけれども、マシンはいい具合に暖まってきている。交通量が少なくなるにつれ、私好みのワインディングロードが現れ始めた。
 
とにかく、LP400の振る舞いは素晴らしい。路面状態がますますひどくなっていたにも関わらず、サスペンションが路面からの衝撃をとても上手く吸収してくれる。ダンピングは心地よく引き締まっていて、4組のリアスプリング(ダンパーとスプリングのセットが左右それぞれに2セットずつ備わっている)というよりもむしろ、ハイトのあるタイヤが仕事をこなしているようだ。
 
そう、良好な状態のカウンタックの走りはかっちりと締まりが効いている。サスペンションが全て、(それ自体とても美しい)チューブラーフレームシャシーに一般的なメタルもしくはラバーのジョイントではなくスフェリカル・ジョイントを介して繋がっているからである。ひとたびこのタイトさを感じてしまうと、もっと速く走らせたくなるのも当然というものだろう。
 
いとも簡単にレッドゾーンの八千回転まで回ってしまうので、オーバーレヴさせないためのちょっとしたアドバイスを送っておこう。最もよく使うであろう一速ギアの守備範囲は時速103キロまでで、二速ギアなら130キロ、そして三速ギアで174キロまで、という感じだ。

編集翻訳:西川 淳 Transcreation: Jun NISHIKAWA Words: Harry Metcalfe 

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