長距離ドライブのためヴィンテージベントレーの魅力とは?後編

Photography: Tim Andrew

エピソードは語りきれないが、暖機を終えたペトロネラは今や完全に目覚め、出かけたがっている。彼女の動きを見ることにしよう。「他のW.O.ベントレーをドライブしたことがある人なら、この車の運転が簡単なことに驚くだろう」プレッシャーがないことは素晴らしい。最初のタスクは新品のボディに凹みをつけずに乗り込むことだ。

十分注意しながら左手をコクピットサラウンドに置き、ドライバーズシートに立ち上がってから運転席に滑り込むか、またはもっとエレガントなやり方はパッセンジャーサイドにしかないドアを開けて乗り込んでから、ドライバーズシートに移ることだ。どちらの方法でも、ドライバーズシートの高い着座位置から、小さなアエロスクリーンを通して長いボンネットを眺めることになる。もっと後の年式の
車ならドアになるはずの位置を刳ってあるおかげで、肘が窮屈になることはない。

シートは前後ポジションの調節が可能で、長身者にも対応できる。あなたの眼前には、どちらかといえばきらびやかな「きさげ模様」のダッシュボードに散りばめられた、通常のW.O.ベントレーでは見慣れた戦闘機のようなボタンとクロック類、そして嬉しいことに4500rpmまで刻まれた、一際大径のレヴカウンターがある。

 
最初にすることは、ダッシュボード中央に置かれたイグニッションスイッチパネルの一番下にある、一対の小さな真鍮製ノブを引いてツインコイルをオンにすること。次に一番上にある同様のノブでイグニッションをオンにする。ステアリングホイールの中央にある2本のレバーの片方で点火時期をいっぱいに遅くする。レバーのもう片方はハンドスロットルだ。これで出発準備は完了である。スイッチパネルの左側のスターターボタンを押せば、スターター(特注した高出力の現代版)が最初の数回転した後、エンジンは咳き込みながら、目覚めて聞き慣れたベントレーの唸りを漏らす。
 
オリジナルの3リッターから5.3リッターに改造されたエンジンが発する大股のビートは、さながら貴族的なホットロッドのように聞こえるが、それはあながち外れた表現ではない。「ベントレー・エンジンの美点はモジュラーデザインだ」と、ペトロネラの大きなエクゾーストに対抗する大声でティムが叫んだ。クランクース、モノブロック、そして最上部のバルブケース。W.O.は彼のすべてのエンジンに同じ"クランクセンター"を使ったので4.5、3、8リッターはすべて同じなのである。



この車は、事実上8リッターの直列6気筒からシリンダーを二つ切り取って5.3リッターに縮小したものといえるだろう。「今回あえて交換しなかったパーツは、かつてベントレーで交換されていたハイスペックの鋳造品でオリジナルのベントレーパーツだ」。
 
それ以外には、ホワイトメタルの軸受(盛りメタル)から、近代のシェルベアリングへの改造。最大の変更はクランクシャフトとフライホイールだ。オリジナル3リッター・エンジンのクランクは、カウンターバランスのない設計だが、この車は、スタンダードの約25%までに大幅に軽量化されたフライホイールを備え、セミカウンターウェイト付きクランクを組み込んである。あとでわかったことだが、装着されていたキャブレターは、戦後型の"SU H6s"だった。願わくば、さらに効率よく働き、高出力にチューンもできるオリジナルのブロンズボディがほしいところだ。
 
カムシャフトは標準の4.5リッター用で「W.O.ほど優れたカムは誰も設計しなかった」と、ティムは断言する。バルクヘッドには、現代のモーターサイクル用オルタネーターを備えるが、これは比較的低速で回るカムシャフトを補うようにギアで増速されている。基本的にはベントレーであるためのエッセンスを失うことなく走行することを目指したものだ。
 
今のところ私は、CタイプのケースにDタイプのギアセットを組み込んだ悪名高いギアボックスを使いこなすことに専念しているが、できればもっと均等なレシオの方がいいだろう。このギアボックスは、シフトレバーが運転席の右側床から生えているタイプで、鉄道の信号レバーのようにガチャンと決まる。さて、やってみよう。これはギアボックスが温まると容易になってくる。以下は実際の経験からのコメントだから参考にしてほしい。
 
ローからセカンドへのシフトは、低および中回転域を使い、ダブルクラッチで早めに行う必要がある。これは当時のヘインズのマニュアルにも同じことが書かれている。セカンドからサードへは、高回転でダブルクラッチは使わずにシフトノブを素早く動かしできるだけスムーズに。サードからトップへはまっすぐに、早過ぎず遅すぎずゆったりと引く。失敗すると次のチャンスはない。そしてシフトは各ギアのポジションを正確に。すごく難しそうだって?

編集翻訳:小石原耕作(Ursus Page Makers ) Transcreation: Kosaku KOISHIHARA( Ursus Page Makers) Words: Mark Dixon

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