2022年、イギリスのクラシックカーラリーが日本にやってくる|The Samurai Challenge 2022

Rally Round



Samuraiたちの挑戦


「Rally Round」が日本で初開催、九州から北海道まで3272km、春の日本を23日間かけて縦断した。

2017年4月下旬、イギリスから来日したラリーイベント主催者に話を聞くため、新緑で彩られた皇居付近へと向かった。今回のそれは、砂埃を巻き上げてドリフトしながら林道を駆け抜けていくものではなく、一般参加型のラリーである。その名をラリーラウンド「サムライ・チャレンジ」という。

「お金が膨大にかかり、次の目的地へと急がなければならないような忙しいイベントではなく、リラックスした雰囲気のなか、訪ねる土地の文化と景色を存分に楽しんでもらえるようなラリーを目指しているの。世界中の様々な国からの参加を期待しているのよ」と主催者でありラリーラウンドのファウンダーでもあるリズ・ウェンマンは話し始めた。

ラリーラウンド社は2012年のマレーシア、タイ、ラオス、カンボジアを廻るタイガーラリーから始まり、初心者から熟練者まで幅広い層を対象とした一般参加型のユニークなラリーイベントを世界各国で開催している。今回は日本からの参加はなかったものの 15カ国からのエントリーがあり、年齢層は30代前半から70代後半までと幅広く、格安航空で来日した参加者もいれば、プライべートジェットでヨーロッパからやって来た人もいたという。バックアップするスタッフも国際色豊かだ。リズが「私たちにとっても同窓会のようなものなの」と嬉しそうに教えてくれた通り、アルゼンチンからオフィシャルのフォトグラファーが、ドクターはイギリス出身でインド在住といった具合に、世界各国からサポートスタッフがこの大会のために集まった。

今回話を伺ったラリーラウンドのリズ・ウェンマン。共に写っているのがサポート車両のZuluだ。「彼女(リズは Zu luをこう呼ぶ)はまさに『動くガレージ』よ」

日本は安全だから


まず、日本で開催する経緯について尋ねてみた。日本の歴史や土地についての知識はあまり多くはなかったが、ラリーラウンドが掲げる「参加者の安全」「車両の安全」「文化の体験」というすべての条件を満たしており、他の国と比較して夜中でも安全に走行可能なことや、参加者の健康面でのリスクも少ないというところが大きな要因だったという。確かに海外のラリーラウンドを見てみると、ヒマラヤ山脈の麓の荒れた道、キリンや象が道を横切りそうなアフリカの荒野、ヨーロッパでは石畳の道がコースの一部となっており、それを念頭に入れると海外からの参加者にとっては日本で設定されたルートは舗装路が大部分を占め、走りやすかったのではないだろうか。



今回、インタビューを行ったのは東京での休息日だった。全23日間の15日目と、まだ三分の一ほどの行程を残した段階ではあったが、それまでの旅を振り返ってみても、岩国の錦帯橋、厳島神社の大鳥居、高野山での精進料理と槍術の体験、京都では舞の鑑賞、彦根城までのヒルクライム、日本独特のゆるキャラとも写真撮影するなど、すでに日本をたっぷり満喫していた様子だ。慣れている参加者は、自分自身の車の写真をポストカードにして持参し、道中ですれ違う子供達に渡し喜ばれていた。ラリーラウンドスタッフにより、逐一ブログやSNSの更新がされ、GPSトラッカーで車両位置も分かるため、離れたところにいる参加者の家族が近況を知ることができるのも安心要因のひとつだという。



富士山の麓では、雪化粧を背に1968年製のポルシェ 912とともにひとりのドライバーが通過した。1976年のF1世界選手権イン・ジャパンでタイトルを獲得したジェームズ・ハントが所属していたマクラーレンにおいて、テディ・メイヤー監督の元でチームマネージャーをしていたアラステア・コールドウェルだ。ちなみに彼は、このラリーのために来日する前は、ハカ・クラシックというニュージーランドのオークランドから南島のクライストチャーチまでの大自然と氷河を舞台とした5000km以上のコースを、98歳にもなる母親をコ・ドライバーとして参加しており、親孝行(?)をしながら自分の車でラリーをしている。

文:笠原直樹、オクタン日本版編集部 Words:Naoki KASAHARA, Octane Japan

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