たった19歳でレーシング・フェラーリを購入したジム・ホールから受け継ぐ0510M

Photography:Ingo Schmoldt



タッツィオ・オーティスはレーシングドライバーの視点から750 モンツァについて語ってくれた。「アメリカで開催されるヴィンテージ・レースのほとんどは20〜30分間のスプリントレースです。750モンツァは、エンジン・トルクが豊かなうえ、コーナーからの脱出速度が速いために競争力が高く、この種のイベントにぴったりといえます」

「初めてこの車に乗ったとき、底知れない不安と畏れを感じました」とタッツィオが語る。「それゆえに、この車のことをもっと知り、その力を引き出したいと思いました。フィル・ヒル、キャロル・シェルビー、そしてジム・ホールにはそれができたのでしょうが、僕もアメリカ人として彼らに倣いたいと願うようになったのです。最初にサーキットで走らせたときはとても驚きました。ビックリするほど楽しくて、しかもバツグンにバランスがよかったからです。もちろん、現代のレーシングカーと違ってダウンフォースもなければグリップのいい太いタイヤもついていません。でも、乗り始めた途端に自信を与えてくれる。だから、どんどんペースを上げたくなってしまうんです」



パトリックはすでに自分の言葉を実践している。レストア後に初めて姿を現した2019年のロレックス・モントレー・モータースポーツ・リユニオンでの走行を成功裏に終えると、その数時間後にはホコリも払わないままペブルビーチのコンコールデレガンスに出場。フェラーリM-2コンペティション・クラスの栄冠を勝ち取ったのである。

0510Mは今後、アメリア・アイランドのコンクール・デレガンスのほか、アメリカやカナダで開催されるレース・イベントに出場する予定だが、それだけでなく、グッドウッドにエントリーする可能性もあるという。つまり、グッドウッドのシケインを猛烈な勢いで立ち上がってからピットストレートを駆け抜け、マジウィック・コーナーに進入していく姿が見られるかもしれないのだ。時を得て、750モンツァが再びスポットライトを浴びる日がやってきたようである。

編集翻訳:大谷達也 Transcreation:Tatsuya OTANI Words and Photography:Ingo Schmoldt

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