走ることは 自分が何であるかを自覚すること│唐沢寿明氏にインタビュー

Special Thanks:GO! GO! Rally Exective Committee


 
とにかく走ることが好きだという。「所有して眺めて楽しむというのもクラシックカーの楽しみだとは思いますが、僕はそういうタイプじゃないです。車は走ってこそだと思っているので。356だってそうです。雨の日でも平気で走っちゃいますから」
 
そのために所有できる車両数にも限界があるそう。「自分が乗ってあげられる台数しか所有しませんし、それを超えてさらにほしい車ができたら、手元の一台を泣く泣く手放します」前述のように、走りたくなると東京都心部を抜け出して郊外へ出向いていく。「東京都心部を車で走るのは楽しくないですね。今回のコロナに限らず、なんだかみんなイライラしているように感じるんです。クラシックカーで走っていて心ない嫌がらせにあったりもしますから。そういう点でも自動車好きのための、走る機会が必要になってきているんじゃないですかね、だから、ラリーが求められているんだと思います」
 
ご自身にとって、走るとは何でしょうか。「今の時代は何もかもデジタルじゃないですか。技術の進歩はありがたいですよ、(こうして遠隔のやりとりができるのも)デジタル技術のおかげですから。でも、人が話す行為そのものはダイレクトな行為ですよね。プリミティブなことというか」「最新の車のように何も気を遣わずに移動できる車はライフスタイルを形作る上では必要だと思います。けれども、たとえば速度域への配慮とか、ブレーキの効き具合だったりとか、そんな基本的なことも含めて、五感を使って運転していることを自覚することは絶対に忘れてはいけないこと。そういうことをちゃんとできてはじめて人が車に乗って走るとか、楽しむ意味が生まれるんじゃないですかね」

「自分はただの人間なんだということを思い知らされることでしか、人間は成長しないと思うんです。デジタルやテクノロジーに頼っていると勘違いしちゃうんですよね。自分がなんでもできるように錯覚しちゃう。思い上がらないためには人間であることを自覚しなきゃいけないですよね。それを発見させてくれるにはクラシックカーは最適です。古いビートルでもなんでもいいと思うんです」「思い知らされますからね、クラシックカーに乗ると。自分の運転の未熟さとか。でもそういうのって大切だと思うんです」

文:前田陽一郎(本誌) イラスト:あべ あつし 協力:GO! G O! ラリー実行委員会 Words:Yoichiro MAEDA(Octane Japan ) Illustration:Atsushi AVE Special Thanks:GO! GO! Rally Exective Committee

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