まるでF1セーフティーカー!アストンマーティン ヴァンテージ 「F1 エディション」に試乗する

Photography : Max Earey

Octane UK編集者である私、グレン・ワディントンが最新世代のヴァンテージを初めて運転してからちょうど3年が経った。ラ・サルトで試乗したとき、ダレン・ターナーらはル・マン24時間レースで苦戦していた。チームが旧型ヴァンテージで成し遂げたことを考えると、決して褒められた結果ではなかった。しかし、状況はよくなる一方だった(そして実際によくなった)。

ヴァンテージのロードカーは十分に質の高い車だったが、それをさらに磨き上げたのが新しいF1エディションだ。このモデルは、アストンマーティンが60年ぶりにF1に復帰したことを記念して開発された。また、アストンマーティンの新しいCEOに就いたトビアス・ムアースが持つ、専門知識を直接活用した最初の量産型アストンマーティンでもある。トビアスは、AMGでの26年間にわたる経験を持つ、筋金入りのエンジニアだ。彼は、「エンジニアリングの改良は、表面的なものではなく、根本的なものを目指すべきだ」と語っていた。



忘れてはならないのは、アストンマーティンがメルセデスAMGのエンジンを搭載していることだ。ヴァンテージのツインターボV8は、メルセデスAMG 63モデルや、ハードコア・モデルであるAMG GT用ユニットに手を加えたものである。

F1に直結したルーツ


アストンマーティンは、2021年シーズンからF1レースに参戦する際、ヴァンテージの公式セーフティカーを開発したのだが、このF1エディションは、実質的にはその市販仕様である。出力は25bhp向上し、527bhp、最大トルクは505lb-ftと、より高い回転域でパワーが発揮される。

マニュアル仕様の設定はなく、8段パドルシフターとそれに連動した“e-diff”のみで、特注のピレリ製タイヤを履いた新しい21インチホイールが用意されている。足回りに関しては、マット・ベッカーが率いるダイナミクスチームが、フロントサスペンション周辺の構造を強化し、再設定されたダンパーと硬めのリアスプリングが組み込まれた。

また、エクステリアは、新しいエアロが最大200kgのダウンフォースを発生させ、F1エディションを強力なマシンに仕立て上げている。内装では、所狭しと数多くのスイッチ類が並ならぶが、ドライバーが扱いやすいように配慮されているために誤操作の心配はない。サポートに優れたバケットシートの位置と、ステアリングの角度を調整すれば、ポジションは決まり、この車を自由自在に操れるよう気がしてくる。回転数が上がるにつれて、メルセデスAMGのエンジン咆哮は、重低音の排気音ではなく、機械的な音が聞こえてくる。



この車はやはり速い。F1エディションでは、標準車よりもさらにシャープで安定したフィーリングを実現している。これは、911カレラとGT3の違いに似ているとも表現できる。スプリングとダンパーの関係がより調和しており、コンフォートモードでは、英国のBロードで遭遇するさまざまな路面状況にも対応し、硬すぎず、ヴァンテージが本来持つべきフィーリングを実現している。ステアリングはドライバーの腕の動きにリニアに反応して、たいへん心地よい。

F1エディションの姿は、シルバーストンに向かう途中のウォリックシャーやオックスフォードシャーの閑静な村を抜ける際、少し目立つものの、そのルートでのドライビングは実に楽しい。そして、アストンマーティンのストウ・サーキットでは本領を発揮し、コーナーリングは鋭く、安定した走りをする。コーナーでスロットルを緩めるとテールアウトに転じるが、決して怯えながら運転することはない。

F1で採用されたセッティングは、トビアス・ムアースが率いる開発プログラムが初めて市販車で実現した技術のひとつだろう。最近発売された限定版のV12スピードスターでは、ヴァンテージによりパワフルなエンジンが搭載可能であることを証明して見せた。そこから派生して、近いうちにV12ヴァンテージが発表されることを期待したい。

新しいエアロ、塗装仕上げ、ストライプのトリムは、F1で研ぎ澄まされた技術を表している。


編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部
Words:Glen Waddington Photography: Max Earey

編集翻訳:伊東和彦 (Mobi-curators Labo.)  原文翻訳:オクタン日本版編集部

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