1台限りのアルファロメオ・ジュリア SWB ザガートに『Octane』UKスタッフが試乗!

Octane UK

エンツォ・フェラーリはスクーデリア・フェラーリ・カラーのアルファロメオをレースに参戦させるため、最高のボディ製作をカロッツェリアであるザガート社に依頼した。それは1930年のことだった。ザガートとアルファロメオの関係は、1921年まで遡る。ミラノのアトリエが設立されたわずか2年後に、ザガートは初めてアルファロメオのボディのボディを手掛けている。両社は、1960年代のSZやTZといったレーシングモデルで伝説的な地位を築いた。また、ジュニア・ザガートシリーズのような限定生産モデルでも親しまれている。

ザガート社CEOのアンドレア・ザガートは、このように説明してくれた。「1921年から続くアルファロメオとのパートナーシップの100年記念を祝うよい方法を考えていたときに、絶好の機会が訪れました。ある顧客が所有する、マニュアルトランスミッションのジュリア・クアドリフォリオ・ヴェルデをベースにした、ワンオフモデルの製作依頼があったのです。これは、かつての時代を思い起こさせました。ジェントルマン・ドライバーがカロッツェリアに特別なものを作るよう依頼していた、そういった時代です。それらが、技術的な実験や開発のための完璧な基盤となったのです」



そして今、ジュリアSWBのワンオフモデルが完成した。ホイールベースは15cm短くなり、クーペでありながらグランツーリスモ特有のボリュームを備え、カムテールと筋肉質なボンネットが組み合わされた。フロントフェイスには左右3つの角型ライト、大型のエアインテークなど、昔のジュニアを彷彿させる雰囲気が漂う。低いダブルバブルルーフや極めて短いリアオーバーハング(テールより14cm短い)のスタイルもあいまって、非常にドラマチックな外観である。車重は1500kgで、セダンの車両重量より約200kgも軽い。ギアボックスは、通常のイギリス仕様の8速ZFオートマチックギアボックスではなく、一部のマーケットにおいてジュリア・クアドリフォリオに設定されている6速マニュアルが搭載される。

アンドレア・ザガートは、さらにこのように述べている。「空気抵抗を大幅に、具体的には20%ほど削減しました。エアロダイナミクスの向上に取り組み、歴史あるザガート製クーペの精神を受け継ぎ、フロントセクションを特に縮小させました。全体的に車高を下げ、特別なウインドスクリーンや、ダブルバブルルーフや切り詰めたテールといった、ザガートの典型的な要素が加えられています。しかもこれらは、CdxA値(空気抵抗係数×前面断面積)に非常に良い結果をもたらしました。シミュレーションによると、SWBの最高速度345km/hに達するはずです」

純粋なコーチビルダーとして、ザガートはジュリア・クアドリフォリオのメカニカルなコンポーネントには手を加えていない。そのあたりはザガートの役割ではないし、SWBにはアルファ・ロメオのセダンとして、既に特別な2.9リッターのツインターボV6エンジンが奢られている。その上で、ザガートの技術者たちは、アルファ・ロメオのテストドライバーらと協力し、最高のハンドリング性能を実現したのだ。

アンドレアの説明が続く。「ドライビングプレジャーの面ではGT的なキャラクターを向上させたかったので、後期のジュリアGTAmから部品を流用しました。具体的には、シングルナット付き20インチホイール、ワイドなミシュラン製パイロット・スポーツ・カップ2タイヤ、ブレンボ製カーボンディスクと新型キャリパー、SWB専用にチューニングされたアイバッハ製スプリングとダンパー、アクラポビッチ製エグゾーストシステムなどです」 結果としてザガートは、「ダイナミックな挙動にちょっとした悪意を加える」ことで、ドライビングエクスペリエンスを向上させたそうだ。

当然のことながら、533bhpのアルファ・クーペに軽量なカーボンファイバー製ボディを組み合わせれば、ハンドルを握る楽しさは格別だ。ザガートは、その期待を裏切らない。ニュートラルでありながら反応性が高く、舗装路からドライバーの指先へ多くの情報が伝わる。そうして、すべてのパワーが簡単に扱えるように感じられるのだ。サーキットでは、オートマチック車の方がコンマ数秒速いということもあるだろう。しかし、このような車では特に、マニュアルシフトがもたらす喜びは計り知れない。

ジュリアのセダンと比較すると、SWBのダイナミックな挙動はステアリングへのインプットに素早い反応を示し、俊敏性が向上している。また、新しいサスペンションのセッティングと轟く排気音により、よりレーシーな印象を受ける。



その成功の基盤となっているのは、アルファロメオの技術者たちによる、最適なバランスの追求という貢献だ。ローダウンして硬くなったサスペンションは、悪路では明らかに硬く感じられるにもかかわらず、セダンの構造的な品位は保たれている。そして滑らかな路面では、高速走行を楽しむための完璧なグランツーリスモとなるのだ。


文:Massimo Delbò

Massimo Delbò

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