ペブルビーチ・コンクールで注目の的!Ken Okuyama Carsの「バードケージkode61」

Shinichi EKKO

今年も北米モントレーの夏は大賑わいであった。8月14日~20日までの一週間、モントレー・カーウィークと称す世界最大規模のカーエンスージアストのための祭典が開催されたのだ。「ザ・クエイル モータースポーツ ギャザリング」、「コンコルソ・イタリアーノ」、そしてカーウィークの締めを飾る「ペブルビーチ・コンコースデレガンス」といったアウトドアのコンクールデレガンスとラグナセカ・スピードウェイにおけるクラシックカーレース、そして世界中のクラシックカー取引金額のほぼ半分がダイナミックに動く、幾つものオークションが主たるイベント内容だ。「グーディング&カンパニー」や「RMサザビーズ」、「ボナムス」をはじめとする多くのオークションハウスが当地にヤードを構え、選りすぐりの名車を競りに掛けるのだ。だから参加者も相当なスタミナがないと灼熱のカーウィークを満喫することはできない。





その中でも、コンクールデレガンスは年々規模が拡大し、重要度が増している。近年はクラシックカーだけでなく、ニューカーの展示も受け入れており、ラグジュアリー・カーメーカーにとってカーエンスージアストの富裕層が集結しているこれらの会場は大切なプロモーションの場となっているのだ。世界各地で行われていた既存のモーターショーが勢いを失っているのとは対照的に、これらコンクールデレガンスはニューモデル発表の場ともなっている。また、各ブランドはペブルビーチに隣接するデルモンテ・フォレストの中の邸宅にロイヤリティの高い顧客だけを集めてもてなしをしたり、通常とは違った顧客フォローが行われている。

日曜日に開催されるペブルビーチ・コンクールデレガンスは北イタリアで開催されるコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステと並んで、クラシックカー・コンクールデレガンスの最高峰と称される。広大なゴルフコースに200台以上の世界から選りすぐりの名車が展示されるのだ。そのカテゴリーは27にも及び、今年創立60周年を迎えるランボルギーニ、同じくマクラーレン60周年、ポルシェの75周年など特別なテーマも用意される。それだけではない。ペガソやコーチビルダーのフィゴーニなどというレアなカテゴリーもあるし、なんとブガッティのタイプ57だけなんていうカテゴリーもあるから驚くばかりのラインナップだ。それら200台余りが27カテゴリーに分けられ、100名を超えるクラス審査員と56名の名誉審査員が選考を行う。まさにキング・オブ・コンクールデレガンスに相応しい大スケールだ。





そして前述したように現代のモデル、それもまだマーケットに出ていないコンセプト・モデル発表の場である”コンセプト・ローン(Lawan=芝生)”が、ペブルビーチ・コンコースに設けられている。今回はクラシックカー展示フィールドの入り口側に13台のニューモデルが並んだ。そして、そのカテゴリーで注目を集めたのは日本からノミネートされたKen Okuyama Carsのバードケージkode61(以下kode61)であった。5月に行われたコンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステでワールド・プレミアを実施した当モデルが、ここに北米プレミアを行ったことになる。代表の奥山清行は名誉審査員にも任命されており、当地のアートセンター・オブ・カレッジで教鞭を執っていたこともあるから、彼にとってはホームグラウンドでもある。「コンコルソ・デレガンツァ・ヴィラデステでこのモデルを発表できたことはとても名誉なことでした。イタリアの自動車仲間の元へ戻ったような懐かしい想いでした。対してペブルビーチはよりリラックスして、カジュアルですが、世界のカーガイが集まってくる、これまた重要な場所です。ここで私達の車作りのポリシーをアピールすることはとても意義がありますし、新しいビジネス形態が生まれる機会がここにはたくさんあります」と奥山は語る。



何はともあれ、ペブルビーチ・コンコースにおいてkode61人気は相当なものであった。皆が現代の車とは一味違ったスリムで地を這うようなレースカーそのもののプロポーションを絶賛した。そして、カリフォルニアの強い光に映えるパール・ホワイトのボディと国際モータースポーツの殿堂入りの当地カニンガム・チームの象徴たるブルーストライプのコンビネーションに皆が魅せられていたことは言うまでもない。低くシャープなロングノーズの下にはV12自然吸気エンジンを備え、6速マニュアル・トランスミッションがトランス・アクスル・レイアウトされているのだから、”ペトロール・ガイ”のカリフォルニア・エンスーに響かないワケはない。奥山と旧知の友人であるジェームス・グリッケンハウスは挨拶も早速に、kode61のドライバーズ・シートへと飛び込んでステアリングを握る。「そう、これだよ。スポーツカーはコレでなくっちゃ」と素晴らしい笑顔だ。



ハイパフォーマンスカーも電動化への道を歩んでいるが、こういった純ガソリンエンジンの少量生産スポーツカーへの強い思い入れが根強いのも事実だ。このkode61と同じくコンセプト・ローンではロータス・タイプ66というこれまたとんでもないニューモデルや、テキサスのハイパフォーマンスカーであるヘネシーが爆音を発しているのだから。

「なんと言っても車は走っている姿が一番美しいのです。ですから私達はコンセプトカー・カテゴリーからは誰も参加することはない”Tour d'Elegance“に参加し、100マイルほどの海岸線を走りました。そう、その道中にイベントサポート隊ではない一台の白バイがkode61にぴったりついてくることに気付きました。これはまずい(笑)と思ったのですが、しばらくすると、彼は「超カッコイイ」と笑顔でサムアップして消えて行ったではないですか。カリフォルニアの警察官にもケン・オクヤマのファンが少なくとも一人できたということでしょう」と奥山は笑う。



この度、奥山の北米で培ってきたネットワークから、自動車事業のスケールアップを可能とするパートナーシップが締結されたという。カナダをベースとするスタートアップ自動車メーカーと協業を開始することによって少量生産のコーチビルダーとしての活動に加えて、BEVや水素燃料自動車などの開発・製造・販売を行うという計画のようだ。自動車や鉄道をはじめとして広いジャンルにおける工業デザインチームを持つ彼らだから、そういった両方の取り組みができるのであろう。その事業の成功によって、より拘りのある日本発のスポーツカーが誕生することを願わずにはいられない。そしてモントレー・カーウィークも日本発でもっと盛り上がってくれることを…


文・写真:越湖信一 Words and Photography: Shinichi EKKO

越湖信一

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