「相当に硬派」なハイパフォーマンスカー、マセラティGT2ストラダーレ

Maserati

マセラティは北米モントレーカーウィークの「ザ・クエイル・ア・モータースポーツ・ギャザリング」にてニューモデルGT2ストラダーレを発表した。展示は、昨年の同イベントでワールドプレミアを飾ったサーキット専用限定モデル、MCXtrema(エムシー・エクストレーマ)、MC20に往年のMC12を彷彿させるリヴァリーを纏ったMC20イコーナという魅力的な3モデルのラインナップだ。

GT2ストラダーレは既にサーキットで活躍しているFIA GT2ホモロゲーションのマセラティGT2のロードリーガル・バージョンである。つまり、ロードモデルであるMC20とサーキットモデルであるGT2の中間に位置する。そして、この魅力的なモデルネームを耳にした皆さんは、マセラティが先代グラントゥーリズモのトップレンジモデルとしてデビューを飾ったグラントゥーリズモMCストラダーレを連想することであろう。

そう、このモデルはまさに”サーキットへと快適にドライブを楽しみ、ハイレベルのレースにおけるパフォーマンスをも追求する”というMCストラダーレの持つDNAの進化版とも言えるのだ。

MCストラダーレが2シーター(基本コンフィギュレーション)、且つロールケージで囲まれたタイトなコクピットを持つ、かなり硬派なモデルであったのに対して、GT2ストラダーレは一見すると極めてエレガントに仕上がっている。デイリーユースにも充分マッチするマセラティGTとしてのDNAが的確に具現化されていると言えよう。

しかし、その中身は相当に硬派である。MC20よりも限りなくGT2に近いと言ってよいかもしれない。

エクステリア


エクステリアにはGT2由来の空力最適化への拘りを多数見ることができる。開発時には“シャークノーズ”と呼ばれたシャープなイメージのフロントグリルとバンパー、大型リア・デフューザーが、そそられる。また、GT2譲りの新形状フロントボンネットもアイコニックなイメージを醸し出すのみならず、空力、クーリングの最適化に高く寄与する。ボンネット、フロントホイールアーチ、リアウィンドウにマセラティのアイコンたる3連のエアベントのテーマがさらに強調されている。





フロントフェンダー上部のエアアウトレットは、ブレーキクーリング、ホイールアーチ内の減圧に寄与する。リアフェンダーのエアインテークも大型化され、新しいカーボンファイバー製クーポラ(球状ドーム)の採用と共にエンジンクーリングの効率を高める。





リアエンドは大型のCFRP製スポイラーの採用でよりスポーティなイメージを見せてくれる。さらにGT2モデルにインスパイアされた新意匠リアウイングはアルミ製で、空力の最適化に併せて3段階にアングルのアジャストすることで、ダウンフォースをサーキットに合わせて調整が可能となる。このリアウイング形状は”ブーメランデザイン”と称されているが、これら実践的なチューニングによって280km/hにおけるダウンフォースはMC20の3倍を超える500kgを達成している。



20インチセンターロック鍛造ホイールもGT2からのキャリーオーバーで、MC20のベーシック・バージョンと比較して約19kgの軽量化を実現している。こういった軽量化への拘りから、GT2ストラダーレはMC20比60kgの重量削減を達成している。

ローンチカラーにセレクトされた”デジタル・オーロラ・マット”は、フォーリセリエ(カスタマイズ・プログラム)のパレットに新たに加わった新色で、赤とマゼンタのマイカ色調を持つブルーとしてとてもユニークなものだ。後述するシートのセレクトも含め、このGT2ストラダーレのオーダーにおいて、カスタマイズ・プログラムの出番はかなり多いであろう。

インテリア


キャビン内はアルカンターラとマット仕上げで統一化されており、CFRPセンターモノコックも意図的に露出させ、レーシーなイメージを高めている。センターコンソールは軽量化の為に小型化され、サベルトとのコラボレーションによるCFRP製ダブルシェルシートはさらに低いシートポジションの選択を可能としている。(ニーズに併せてサイズが選べる他、コンフォート指向のスポーツシートもセレクト可能)





また、ステアリングホイールも開発ドライバー アンドレア・ベルトリーニのノウハウを活かして更に進化したものとなり、9個の白、青、赤のLEDによりドライバーにギア・チェンジの正確なタイミングを知らせるシフトライトも装備されている。



パフォーマンス


おなじみネットゥーノエンジンはECUのアップデートとエキゾースト系の改良により、最高出力640psへとパワーアップ。マセラティとして、“サーキット以外でも使用可能な最もパワフルなICE搭載モデル”の称号を得た。ターボチャージャーの改良により、ピークパワー時のブースト圧と効率を高め、エキゾーストシステムのアップデートによりバックプレッシャー低下させることで、パフォーマンスの向上を実現した。

サスペンションのジオメトリーはGT2に準ずるもので、ブレーキシステムは、ブレンボとのコラボレーションでGT2ストラダーレ専用に開発された。ディスク径、厚み共にアップデートされ、ドライビング・パフォーマンスが向上している。システム温度を下げるために必要なより多くのクーリングエアが供給できるよう、ボディ全体のエアフローが最適化されているのは前述の通り。

クエイルロッジにディスプレイされた個体は基本的にプロダクションモデルと同等で、デリバリーも2025年前半とされている。このところあまり明るいニュースがなかったマセラティだが、このGT2ストラダーレのポテンシャルの高さは激戦区であるハイパフォーマンスカー・マーケットに少なからぬインパクトを与えることになるであろう。

デザイントップのクラウス・ブッセ

前述したMCXトレーマだが、今回展示された個体は顧客へのデリバリー第一号車だ。北米在住のオーナーへ手渡すべく、開発ドライバーであるアンドレア・ベルトリーニにより、ラグナセカ・スピードウェイにてシェイクダウンが行われた。筆者とも旧知の仲である彼も、このマシンの素性の良さを熱く語ってくれた。



ジョヴァンニ・スグロとアンドレア・ベルトリーニ

インパクトあるスタイルとカラーリングのMCXトレーマの疾走は、マセラティ創立110周年記念をラグナセカに大きくアピールしてくれたであろう。




文:越湖信一 写真:越湖信一、マセラティ
Words: Shinichi EKKO Photography: Shinichi EKKO, Maserati

越湖信一

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