ポルシェ959を最新技術で「究極の911」へとアップデートさせた執念のレストア

1988年カネパ・ポルシェ959(Photography:Mark Dixon)



959を磨く
主人公はデイトナ24時間、パイクスピーク、ラグナセカなどで活躍した元レーシングドライバーのブルース・カネパだ。MOMO社の創業者であるジャンピエロ・モレッティのコ・ドライバーとして、MOMOチームのポルシェ935をドライブしたほか、マーチGTPグランドエフェクトカー・プロトタイプを、ラハール/トゥルーマンと組んで走らせている。現在では、クラシックカーレースに参戦している。

ブルースがCEOを務めるカネパ社は、カリフォルニア州スコッツバレーにあるヒストリックレースカーやホットロッドなどのレストアや整備、製作をする会社だ。ブルースは1987年に959を購入したが、アメリカの衝突安全基準や排ガス規制をクリアできず、輸入することができなかった。マイクロソフト社のビル・ゲイツとポール・アレンも同様の事態に陥り、3人が揃って"展示車両"として輸入できるよう新しい法律を作らせたという事実には驚かされる。

些細なトラブルがフラストレーションに
いざ959をドライブしてみたブルースは、いくつかの不満を覚えた。

「ポルシェは、959の開発最終段階において、造れば造るほど赤字になることが分かったのではないでしょうか。そして、959の開発を道半ばで諦めてしまったのではないかと、そう思えるのです」とブルースは語る。クラッチは重すぎるし、エアコンのスイッチは壊れ、オイルポンプは必ず漏れる。どれも、さして大きな問題ではない。だが、959のポテンシャルが高いだけに、ブルースにとっては歯がゆさを覚え、もどかしくなった。

935のエンジンは911用の水平対向6気筒がベースで、"モビーディック"935や961などに採用されたものをグループB用にデチューンしたものだった。すなわち、959は市販車ながら、レーシングエンジンを搭載していたということだ。したがって、厳しい排ガス規制をクリアするのは至難の業だ。しかしブルースは、カリフォルニア州ならびに連邦政府の排ガス規制をクリアすることに挑んだ。959を展示車両にしておくのは、あまりにもったいないからだ。

「まずEGR(排ガス再循環)をしてみたのですが、最高出力は100bhpほど低下してしまいました。ほかにもEGRを試みたチューナーはいたようですが、彼らは150〜200bhpのダウンと聞いています」とブルースは回想する。次なるステップとして、排ガス規制クリアのためにポルシェ社とも協力して取り組むことになった。

「959のエンジンは3700rpmまでフルブーストが掛かりません。1個目のターボにブースト圧が掛かると、2個目のターボに空気が供給されるのですが、すると1個目のターボの圧はゼロになって100bhpほど失います。ポルシェ社に問い合わせたら『あのセッティングはもうしていない』と笑っていました」

無理もないのは、当時の911ターボに顕著だったターボラグが大きいという悪評に対応していたからだ。だからこそのシーケンシャルターボであり、当時としては最新鋭のエンジンマネージメントシステムを組み合わせていた。

編集翻訳:古賀貴司(自動車王国) Transcreation:Takashi KOGA (carkingdom) Words:David Lillywhite Photography:Mark Dixon 取材協力:Canepa (www.canepa.com)、ロバート・オーカット

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