DIYで組み立てるキットカー!?「ケリソン」という幻の自動車メーカー

Photography Charlie Magee

まるでピクサー映画に登場しそうな、表情豊かな「ケリソンJ5」。実はこれ、DIYで組み立てる“キットカー”。とはいえ、その出来栄えは良く、グッドウッドのリッチモンド公爵でさえも所有しているほど。しかし、いくらクラシックカーに精通したOctane誌の読者でも“初めて見た”という方が多いのではないだろうか?



正式な会社名は「ケリソン・マニュファクチャリング」で、1958年に設立された。創業したのはアメリカ人起業家、ジム・ケリソン。ケリソンは若い頃、フォード・モデルAをDIYでホットロッドに仕上げるような青年だった。そんなケリソンが目をつけたのが、グラスファイバーだった。1940年代から徐々に自動車に用いられるようになり1953年、シボレー・コルベットが大量生産車として初めて、グラスファイバーを用いた。ここに掲載している写真はのケリソンJ5は、コルベットのシャシーにそのまま“被せる”形で開発されていた。モデル名の「J」はケリソンの名前、JIMの頭文字で数字は開発番号を指している。



J5の需要は旺盛だったが、生産が追いつかずケリンソンは、アレン・マックス・ジャーメインが設立した、アストラ・オートモーティブと協業せざるを得ない状況に追い込まれた。協業の条件のひとつにあったのが「ケリンソン」の名称不使用。事実、J5のカタログは、アストラ・ブランドとなっている。



そんなケリソンはJ6まで開発し、1970年に廃業。1970年代後半には、コブラ
のレプリカ「スタリオン」を製作したこともあったが、ケリソンが自動車業界に戻ることはなかった。しばらくリタイヤ生活を送った後に本屋を経営し、現在はご子息が引き継いでいる宝石業を営むことになった。アメリカで生まれたケリソンだが現在、「ケリソン」ブランドの復活を仕掛けているのは、イギリスでクラシックカー・ディーラーを営む、アラン・キャリントン。



12年間存在したとはいえ、ほとんど幻のケリソン。再び、注目を集め
る日が来るのか気になる存在だ。

Words: Mark Dixon

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