アルピーヌM64 ル・マンへ帰る道

Photography:Chris Szczypala/@igiveashoot(action)



それにしても50年である。初めてのテスト走行の朝、私はこの車が過去50年間、サーキットを一度も走ったことがないことを考えないようにしていた。モンティチェロ・サーキットは、ニューヨーク・シティの北西2時間の場所にある美しいプライベート・コースだが、そのパドックで私たちの準備に手落ちはなかったかと自問しながらエンジンを暖気していた。真新しいサベルトを締め上げると、頭を傾けてヘルメットとHANSの連結を確認してからギアレバーを1速に滑らせ、ピットロードを走り出した。

フラッグマーシャルが笑顔でまったく問題ないと合図を送ってくれた。モンティチェロの南コースは隅々まで良く知っている。コースに合流するとすぐにタイトな右コーナーが待っているが、そこでゴルディーニ・ユニットが5500rpm以下では機嫌よく応えてくれないことに気づいた。エンジンの耐久性を考えて、回転数は8000rpm以下にキープすることにしていたが、それでも十分以上の性能を備えている。次のタイトな右コーナー、いみじくも"ペイシェンス"と名付けられたコーナーを鋭く回り、"プルーデンス"と呼ばれるS字コーナーの連続に差し掛かった時、エンジンのトーンがクリアになりM64は猛然と加速した。左コーナーを加速しながら回り、レールに乗ったように左から右、そして長く回り込む左コーナーへと敏捷に動く。ロータス23Bと同じような挙動だが、もう少ししっかりした足取りでよりスタビリティが高い。ステアリングは軽く自由自在で、当たり前だがアルピーヌA110と良く似ている。

短い休憩の後に、1200mのバックスレートを持つモンティチェロの4.1マイル(6.6km)フルコースに舞台を移した。そのストレートでステアリングホイールを真っ直ぐに据えた瞬間、M64は本当の姿をすべて見せてくれた。それは空気の壁を貫く矢だった。ターマックの上を真っ直ぐに、まったくぶれることなく飛ぶ矢である。

シャンパンで酔っ払ったロジェ・ド・ラジェネストならば、レースについていくつかのことを教えてくれたかもしれないが、もちろん1964年当時に全力で走らせた場合の限界性能まで知っているというつもりは毛頭ない。だが、ストレートの中ほどにあるキンク目指して矢のように飛びながら考えた。おそらく今私は、かつての姿のごく一部を垣間見ているのだろう。M64はすっかり走る準備ができているように思えた。とても長い道のりを、素晴らしい速さで、もう一度ル・マンを目指して。


1964年アルピーヌM64
エンジン:ルノー・ゴルディーニ、1149cc、
4気筒DOHC、ウェバー45DCOEツインチョーク・キャブレター×2基
最高出力:105bhp/7000rpm
トランスミッション:ヒューランド製5段MT、後輪駆動

ステアリング:ラック&ピニオン
サスペンション(前):ダブルウィッシュボーン、コイルスプリング、
ダンパー、スタビライザー

サスペンション(後):トレーリングアーム、アッパータイロッド、
コイルスプリング、
ダンパー、スタビライザー
ブレーキ:ドラム 車両重量:648kg
最高速度:150mph(約241km/h)

編集翻訳:高平高輝 Transcreation:Koki TAKAHIRA Words:Mitch McCullough Archiveimages:Renault Communication Photography:Chris Szczypala/@igiveashoot(action) and Tim Scott(static)

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