アストンマーティン初となる超高級パワーボートのお手並み拝見

Photography:Max Earey

アストンマーティン初となる超高級パワーボート、AM37をテストした。成長を続けるアストンブランドのお手並みを拝見しよう。

初めてAM37について耳にしたとき、私には驚きと懐疑心しかなかった。アストンマーティンには他にやるべきことが山ほどあるではないか。DB11の発表に始まり、V8ヴァンテージ後継モデルの開発、新ファクトリーの建設、ビジネス全体の抜本的改革など、枚挙に暇がない。わざわざ海にまで手を広げなくても⋯、そう思ったのだ。とはいえ、せっかく"新アストン"を試さないかと誘われたのに無下に断るのは失礼なので、もちろん引き受けた。

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モナコで試すAM37Sについて少し調べると、そんな私でも純粋に好奇心を掻き立てられた。第一に、この"S"バージョンは8.6 リッターという巨大なレース仕様のマーキュリー製V型8気筒ガソリンエンジンを2基搭載する。出力は各520bhpに上り、トータル1040bhpとなるから、私の知る限り史上最もパワフルなアストンだ(ちなみに、370bhpのディーゼルエンジンを2基搭載するバージョンもあり、こちらはアストン初のディーゼルということになる)。また、"S"バージョンの最高速は50ノットを超える(92㎞/h超)。これは、水上では相当の速度だ。また、コーヒーメーカーや冷蔵庫、トイレも備えるというから、どれをとってもこれまでに経験したアストンとまったく違う。

AM37を生み出すにあたって、アストンマーティンは当然のことながら造船のスペシャリストと手を組んだ。それがオランダのクインテッセンス・ヨットだ。プロジェクトの発端は3年前にさかのぼる。クインテッセンスの創業者でアストンのオーナーでもあったルイ・ポール・スタインバーグが、アストンマーティンのスーパーカーと同じデザイン哲学でボートを造るアイディアを持ち込んだのだ。当初、アストン首脳陣の返答は芳しくなく、他の仕事が山積みだから無理だが、半年後にまた連絡してみてくれと言われた。そこで、きっかり半年後にもう一度電話したところ、その粘り強さが効いたのか、はるかに前向きな返事をもらえたのである。



チームは、まずボートのタイプを検討することから取りかかった。その結果、スポーティーなデイクルーザーで、デッキの下にひと晩が過ごせるキャビンを設けられる、全長35~40フィートのものに決定する。これを受けてクインテッセンスは、船舶設計で名高いミュルダー・デザインに船体設計を依頼した。チームの要求はスピードと安定性を兼ね備えたものにすることだったが、面白いことに、高速走行でも曳き波をできるだけ小さく抑えるという条件が付いていた。次に、マレク・ライヒマン率いるアストンマーティンのデザインチームが水面から上のデザインに取りかかり、ゲイドンのスタジオで縮尺40%のクレイモデルにまとめ上げた。

デザインが固まると、クインテッセンスがAM37Sプロトタイプの製造に着手。製造はサウサンプトンの新しい施設で行われた(製品版のボートもここで造られる)。こうして完成したプロトタイプが、2016年9月のモナコ・ヨットショーで全世界に披露され、その数日後に私が試乗することとなったのである。

編集翻訳:伊東 和彦(Mobi-curators Labo.) Transcreation:Kazuhiko ITO(Mobi-curators Labo.) 原文翻訳:木下 恵 Translation:Megumi KINOSHITA Words:Harry Metcalfe 

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