新旧ポルシェのタルガルーフを突き詰める│クラシックの魅力とは?

 Photography:Paul Harmer

一般的にポルシェ愛好家は、クーペボディこそが最高の911であると信じてやまないようだ。しかし1973年式2.4Sタルガと最新のタルガ4Sからは、別な答えが導き出される。

2014年、最新の911シリーズ(991型)にタルガボディが追加された。それはグラント・ラーソンの手によってエレガントかつモダンに仕上げられていた。タルガボディ最大の特徴であるメタリックのロールバーにはエアダクトが設けられ、1965年に登場した初代モデルから変わらない書体で"Targa"のロゴが入っている。

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1963 年、ポルシェは長寿モデルであった356の後継車として、現在にまで続く911シリーズをフランクフルト・モーターショーにてデビューさせた。

1965年にはそのオープンモデルとして911タルガを投入した。その特徴はフルオープンではなく、太いBピラーを残し、ルーフパネルとリアウィンドウを取り外す機構であった。この形態を採用した背景には、米国運輸省道路交通安全局による"オープンカー禁止"への動きがあった。ちなみに、ポルシェは911の開発段階でリアエンジン・レイアウトからの脱却を検討したが、これもまた米国運輸省道路交通安全局の動きゆえであった。


 
タルガ当初はファスナー付きのビニールウィンドウを備えていたが、1968年からガラスになった。以後、販売された歴代911の約10%がタルガボディとなっている。
 
タルガという名称は、ポルシェが活躍したイタリアの公道レース、タルガ・フローリオが起源だ(ポルシェがこのレースにタルガで参戦したことがないのは、ちょっとしたアイロニーだ)。また、ボディ剛性、車重、前後重量配分などを語るのが好きなエンスージアストたちはタルガに見向きもしないのは事実だろう。たしかに2.7RSに代表される走るために特化した911は、運転するたびに感動さえもたらしてくれる。その彼らが2.7RSのような911を追い求めるのも無理はない。

イギリスのクラシックポルシェ・ドライバー/スペシャリスト、ロバート・バリーはエンスージアストの気構えにも変化が出始めていると語る。
 
「シャシーナンバー、エンジンナンバーなどの一致、フルオリジナルであることなどが評価されるようになり、901やRSなどは、もはや富裕層でさえおいそれと手を出せない相場が形成されつつあります。そんななか、最近、古いタルガにエンスージアストたちの触手が伸び始めています。というのも、サーキット走行しないばかりか、古い車でガンガンに走ろうと思う人も少ないというのが事実でしょう。RSのレプリカを買うくらいなら、手の出しやすい古いタルガを気軽に"楽しむ"ことが流行になりつつあります。クラシックポルシェとしての魅力はクーペもタルガも変わりませんから…」と、現在のクラシックポルシェ市場を分析していた。
 
新旧のタルガを乗り比べるにあたって、もうひとりのドライバーには本誌寄稿者であり、デザインのオーソリティ、クラシックポルシェ・フリーク(356スピードスター数台、クーペ数台、そして911 2. 7RSオーナー)である、デルウィン・マレットを招いた。デルウィンは、ガーズレッドの911タルガ4Sに乗って待ち合わせ場所に現れた。私は個人的にはV12フェラーリの赤色しか好きではないが、タルガ4Sの赤も悪くない。特にロールバー部分のサテンシルバー、マットブラックのホイール(オプション装備)という組み合わせも素敵だ。
 
デルウィンは降りてくるなり「凄い」と興奮気味に言葉を発した。「このタルガは現行911ライナップで最高に美しいと思う。ルーフが開閉する様子は面白い19秒間だし、とにかく周囲からの熱い視線を集める。そして、笑ってしまうほど速い」とデルウィンは続けた。

編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation:Takashi KOGA Words:Robert Coucher

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