新旧ポルシェのタルガルーフを突き詰める│クラシックの魅力とは?

 Photography:Paul Harmer



クラシック・タルガで走り出してまず気づかされるのは、その軽さだ。エンジンは"もっと回してくれ"といわんばかりに、シャープなレスポンスで高回転域まですっきり回る。空冷独特のエグゾースト音に加えて、大きなクーリングファンやバルブギアの精緻な動作音がたまらない。なお、エンジン重量を抑えるため、クランクケースにはマグネシウム合金が用いられている。ステアリングはラック・ピニオン式でパワーアシストの備えはないが、リアエンジンゆえにステアリング操作は軽い。また、ステアリングを通して伝わるタイヤと路面の接地状況はダイレクトかつ正確で、エグゾースト音の次に絶賛したくなるポイントだ。ブレーキディスクはクラシック・タルガでさえベンチレーテッド・タイプで、サーボは持たず、踏み込み量に忠実に働く。このサーボなしでも十分過ぎる制動力は、車重の軽さがもたらした恩恵と言えよう。
 
クラシック・タルガはルーフを取り外しても、車内への風の巻き込み量は少なく、帽子を被る必要はない。乗り心地は純正ホットロッドとはいっても、イギリスの荒れた路面でもしなやかさが光る。タイヤサイズは純正が185/70なのに対して、試乗車が195/60のピレリP6000と現代のものを履いていることに加え、フルレストアされた個体というのも理由だろう。クラッチ、ステアリング、ギアシフトすべてがスムーズでバランスがよく、ドライバーは車両との一体感を満喫できる。ハイパフォーマンスモデルにありがちな、低速域でのギクシャクした動きとは無縁で、どんな場面でもスムーズで必要十分にパワフルだ。
 
0-60mph(96㎞/h)加速を6.5秒で走り、最高速度が232㎞/hという数値は37年前のものとしては、目を見張るものがある。サーキットに通うようなエンスージアストたちは、クラシック・タルガのボディ剛性不足を指摘するかもしれない。だが、一般道を速いペースで運転するのには、何ら問題はなく、不満も出ないはずだ。ルーフ装着時には多少、風切り音がするのは事実だが、ヒーターはよく効き、風の巻き込み量も少ないタルガに乗れば、可能な限りオープンで走りたくなるはずだ。
 
真新しいタルガ4Sのボディは、クラシック・タルガよりもひと回りもふた回りも大きくなっているのにもかかわらず、センターコンソールやドア内張りの形状のせいだろうが狭さを感じた。ただ、デザインは最先端の"コックピット感"が漂っていて美しい。クラシック・タルガのエグゾースト音と比べると、3.8リッターの水冷対向エンジンは、低音が鳴り響くものの"静か"だ。
 


試乗車は7段MTだったが、シフトフィールはクラシック・タルガとまったく別物だ。クラシック・タルガは腕を動かしてシフトするのに対して、最新タルガは手首だけの動きで済む。パワーステリングのフィールについては、一部で批判めいた声もあるようだが、個人的には適度なアシスト量で文句のつけどころはないと思う。

編集翻訳:古賀 貴司 Transcreation:Takashi KOGA Words:Robert Coucher

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